Skervesen Guitars(スケルヴェセン ギターズ)とは
Skervesen (スケルヴェセン) は、欧州はポーランドにおいてカスタムギター・ベースを製作する工房。主にヘヴィ・ミュージック向けのモダンなギターを製造するブランドである。
読み方は英語だとスカーヴセン、ポーランド語だとスケルヴェセン。
Skervesen Guitars の沿革
ポーランド共和国は中央ヨーロッパに位置し、「ピアノの詩人」と称されるフレデリック・ショパンを輩出した国。親日国として知られ、現在ではBlackat Guitarsや、ハイエンドブランドとして名高いMayones Guitarsなどの数多くのギターブランドが軒を連ねる知る人ぞ知るギター名産国だ。
創業者でありオーナーのJarek Konkol(ヤレク・コンコル)氏のギター製作はそんなポーランドの地下の一室から始まり、1980年代半ばにはMayones Guitarsに入社。12年間在籍し主にプロダクション・マネージャーとして楽器を製造した。
1990年代後半にはCAD/CAM技術にのめり込み、家具・インテリアデザインの会社を設立。その後、2011年に満を持してSkervesen Guitarsを創業した。
創業以来、「常に弾きたくなるギターを、それでいて世の中に存在しないものを」というコンセプトで革新的な楽器を製造し、今では少規模ながらヨーロッパの音楽シーンを支えるギターブランドとなっている。
Skervesen Guitars の特徴
人間工学に基づいたボディデザイン

Skervesenでは、多くのモデルで人間工学に基づいたボディデザインが採用されている。
座って弾くときも立って弾くときも体にフィットしやすくなるため、非常に高い演奏性の楽器となるだけでなく、他に類を見ない洗練されたモダンな印象の見た目となり、同社のコンセプトを体現している。
独特なネックシェイプ

ネックシェイプも人間工学に基づいた独特なアシンメトリーデザインを採用。
低音弦側が薄く高音弦側が厚いそのグリップは、最初は少し違和感を覚えるが慣れるとかなりストレス無く演奏することが可能で、前述のボディシェイプと相まってSkervesenの高い演奏性を決定付ける要因となっている。
グリップの頂点もハイフレットに向けて低音弦側から高音弦側へとずらされており、特にクラシカルフォームで真価を発揮するシェイプだ。
攻撃的なヘッドシェイプ

ブランドの顔となるヘッドシェイプは、先端が尖ったシェイプやペグ部分以外を大きくえぐったシェイプなど、非常に攻撃的なデザインが特徴的。ひと目見ただけでSkervesenと分かるその革新的なデザインは人々に人気な点の一つだ。
極上の木材

Skervesen Guitarsのギターが人々を魅了する大きな要因の一つが、使用される木材だ。オーダー時には様々な材が選択可能で、いずれも厳選された極上の木材が使用され、高度な塗装技術と相まって見る者に圧倒的な印象を与える。
多彩なカラーオプション

多くのカラーオプションが用意されている点も見逃せない。中にはSkervesenでしか見ないカラーも多く、極上の杢を活かすための拘り抜かれたカラーは必見。
ウッドパーツ

Skervesenでは、バックパネルやトラスロッドカバーにも木材をしている。一般的にはプラスチックが使用される事が多いところだが、木材で製作することでボディとの一体感が増し、ハイエンドギターらしい高級感と特別感が醸し出される。
Skervesen Guitars の代表的なモデル
Skervesen Guitarsの代表的なモデルをいくつかご紹介。
Raptor
Skervesenで最も人気を誇るモデル。ダブルカッタウェイのクラシカルなボディシェイプながら、24フレット、コンパウンドラジアス指板などのモダンスペックを取り入れたスタンダードなギター。
スタンダードであるが故にオーダー時の選択肢も多く、ヘヴィミュージック以外にも幅広い用途に対応可能だ。
Swan
快適性と音質を優先し、マルチスケールを念頭に設計された、人間工学に基づいたデザインのモデル。
ボディシェイプのみならず、ボディトップにも人間工学に基づいた3次元アーチ加工がされており、同社のギターの中で最も演奏性に優れたモデルの一つ。
Shoggie
Swan同様、人間工学に基づいたデザインのモデル。ヘッドレスギターならではの取り回しの良さと軽量さが魅力。
Bronto
ネックシェイプやピックアップの位置を研究し、低音の中でもベースの特に美味しい音域を選択的に楽しめるようにデザインされたベース。
マルチスケール、スルーネック仕様のみという割り切った仕様も特徴的。
Skervesen Raptor / Skervesen Swan を徹底解説

ここからは、Skervesenの顔とも呼ぶべき代表的なモデルであるRaptorとSwanについて、筆者所有の個体を元に詳細に解説していく。Skervesenのギターの魅力が少しでも伝われば幸いである。
スペック
仕様については以下の通り。
Raptorは7弦、Swanは8弦で、どちらもファンフレット仕様。ベースとなるモデル名の後に弦の本数を示す数字と、ファンフレットであることを示す「FF」の文字が連なる。

モデル | Raptor 7 FF |
---|---|
スケール | 25.4''-27" |
ボディトップ | Poplar Burl |
ボディバック | Black Limba / Pau Ferro |
ネック | Wenge / Bubinga 5Piece |
指板 | Ebony |
ブリッジ | Hipshot Fixed |
ペグ | Hipshot Grip Lock |
ピックアップ | Bare Knuckle Juggernaut |
コントロール | 1 Vol,1 Tone,3way SW w/Coil Tap & WDM |

モデル | Swan 8 FF |
---|---|
スケール | 25.4''-27" |
ボディトップ | Poplar Burl / Bubinga Mid Layer |
ボディバック | Swamp Ash |
ネック | Maple / Wenge 5Piece |
指板 | Maple |
ブリッジ | ABM Solo Single |
ペグ | Hipshot Grip Lock |
ピックアップ | Bare Knuckle Juggernaut(Neck) / Aftermath(bridge) |
コントロール | 1 Vol,1 Tone,3way SW w/Coil Tap |
木材

どちらもボディトップには独特の杢目が特徴的なポプラバールが採用されている。大理石の様な美しい杢目が人気のエキゾチックウッドだ。

更にSwanはバック材との間にブビンガを挟むことで、ベベルカット部でのコントラストを強調している。

Raptorのボディバックはブラックリンバとパーフェローの3ピース構成。エキゾチックな見た目は勿論のこと、どちらも比重の大きめの木材で、タイトで重いサウンドを出すには最適だ。
ウエストカットは小さめで、ボディエッジは45度の面取りがされている。全体的に無骨な印象を受けるが、抱えたときの安定感は抜群だ。

Swanのバック材は2ピースのスワンプアッシュ。カラッとしたサウンドが特徴のオーソドックスな材だ。シミや虫喰いが発生しやすい材だがそういった点は一切無く、軽量な良い材が使用されている。
Raptorと比べボディエッジは大きめの面取りがされており、前述のエルゴノミックデザインのおかげか身体へのフィット感がすこぶる良い。

Raptorのネックはウェンジとブビンガの5ピースのラミネートネック。どちらも非常に硬く剛性の高い木材で、芯のあるサウンドが魅力的だ。5ピースにすることで強度が更に高められており、多弦ギターでも安心だ。

Swanのネックはハードメイプルとウェンジから成る。前述のウェンジとブビンガのネックと比べ粘りのあるサウンドが特徴だ。こちらも5ピースにすることで強度を更に高めている。


指板材はRaptorがエボニー、Swanがメイプル。エボニーは近年稀になりつつある真っ黒なエボニーだ。メイプルはそれに対を成すかのように真っ白で、どちらも目が非常に細かく詰まった材だ。
木工

ヘッドはいずれもSkervesen特有の攻撃的なシェイプ。トップ材と同じ木材が貼られ、マッチングカラーで彩られている。


Raptorに採用されている「4AP」ヘッドシェイプは、MayonesのDuvellのヘッドシェイプと酷似しており、ロゴの質感も同じだ。ちなみにSkervesenもMayonesもロゴはシールなので剥がれやすく、クロスなどで拭く際は注意が必要。


ヘッド角度は通常12~14度であるのが一般的だが、Skervesenはかなりヘッド角度が小さい。角度が小さくなることで弦のテンション感が弱くなり、押弦しやすくなる点が特徴だ。
ここもMayonesのギターと非常に似通っており、Skervesenの創業者がMayonesに在籍していた痕跡が伺える。

フレットはどちらのギターにもピカピカに磨かれたJescar製ステンレスジャンボフレットが打たれている。フレットエッジの処理も丁寧で、演奏性は抜群。
指板サイドのポジションマークには蓄光素材のLuminlayが使用されており、暗転中のステージなどの暗い場所でもポジションマークを視認できるようになっている。

Swanの指板のようなバインディングの無い指板では、指板サイドからフレット溝が見えてしまうものが多いが、Skervesenではフレット溝が見えないように溝切りされている点も好印象だ。
また、12フレットにはオプションでSkervesenのロゴインレイを入れることも可能。きれいに埋め込まれた木製のロゴインレイは、フレットに重なる部分を避けて埋め込まれており、フレット浮きが起きないように配慮されている点もポイントだ。


ネックセット方式はRaptorがセットネック、Swanがボルトオンネック(デタッチャブルネック)。どちらもネックのヒールがボディのギリギリまで削り込まれており、24フレットまでスムースに手が入る。
この手のダブルカッタウェイモデルには珍しく、ボルトオンネック、セットネック、スルーネックの3種全てのネックジョイント方法が選択できる。

スイッチやポットなどを格納するコントロール・キャビティ。銅箔テープできっちりとノイズ対策がされている。配線も丁寧で綺麗だ。
また、独立式のブリッジが採用されているSwanでは、専用のバックキャビティを掘り、ブリッジ一つ一つを丁寧にアースに落としている。
ジャック部も特徴的で、ボディを切り欠くことで外周に対して斜めにシールドがさせるようになっており、シールドにかかる負荷を低減できるようになっている。
ハードウェア
ハードウェアも現代的。全てにおいてモダンで高品質なパーツが採用されている。

Hipshot製ロックペグ。ダイヤルによって弦をロックすることでチューニング精度を向上させている。弦交換が楽になる点も大きな恩恵だ。

Graph Tech社のBlack TUSQ XL製。弦との接触により摩擦を抑えるマイクロ分子が放出され、その分子が潤滑剤となり、チューニングの安定性がさらに向上する。
トラスロッドカバーはエボニー製。
ペグとナットの間には弦の共振を抑えるパーツが標準装備され、フレットラップを装着したときのようなタイトな鳴りを生み出す。こちらもエボニーが使われており、その上にスポンジ素材が貼られている。

RaptorのブリッジはアメリカのHipshot製。ステンレスサドルとブラスのベースプレートが弦振動を余すこと無くボディに伝える。

SwanにはドイツのABM製。各ブリッジを独立させることで他の弦の振動の影響を極限まで減らし、長いサスティーンとタイトなサウンドが得られる。

ピックアップには英国のハンドメイドピックアップブランド、Bare KnuckleのJuggernautを二発搭載。アメリカのプログレメタルバンド・Periphery(ペリフェリー)のギタリスト、Misha Mansoor(ミーシャ・マンスール)氏のシグネイチャーモデルで、抜ける高音とタイトな低域が特徴のピックアップだ。
ピックアップ本体に木材を貼り付け塗装することでボディカラーと合わせている点もポイント。貼られている木材は何故かボディ材には一切使われていないバーズアイメイプルとアッシュ。

コントロールは1ボリューム、1トーンに3wayトグルスイッチ、それに加えてコイルタップスイッチとWDMスイッチが付く。
WDMはWorld Domination Modの略称で、Skervesen独自の配線によりアコースティックに近い音色が得られるというものだ。アコースティックとまではいかないが、非常に綺麗なクリーンサウンドが得られる。
付属品

どちらも高級感のある書類。スペックは手書きで記入されている。

英国Hiscox製のハードケース。Skervesenのロゴエッチングがクール。十分な堅牢性のあるケースだが、これよりさらに堅牢性のあるフライトケースも選択できる。
サウンド
肝心のサウンドについては、極端にタイトで分離感のあるサウンドのように感じる。派手な高域と、カットされた低域が現代的なメタル専用といった印象だ。ピッキングへの反応もとにかく速い。見た目通りのサウンドで弾き手を選ぶとは思われるが、ハマる人にはハマる、そんなギターだ。
オーダー方法
2025年9月現在、メーカーホームページより直接コンタクトを取ることでオーダーすることが可能。オーダーの流れを以下で簡単にご紹介。
モデルの選択

ホームページの上部バナーからモデルを選択。

「Read More」をクリック。弦数については後ほど変更可能なので、ここでは6弦でも7弦でも好きな方をクリックして問題ない。

「Custom Order」をクリックしオーダーフォームへ。
仕様の決定

オーダーフォームで細部の仕様について選択し、仕様を決定する。
仕様を選択し、「Next」をクリックすると次の仕様選択に進むことができる。

トップ材選択ページで、「TOP WOOD MATERIAL SELECTED BY THE CUSTOMER」を選択すると自分でトップ材を選ぶ事が可能。50ユーロでストックから好みの材を選ぶことができるので、ここは是非こだわりたい。
オーダーフォームの送信
オーダーフォームの最後、「Comments and Questions」のページで必要事項を記入し、「Send Order」ボタンをクリックしてオーダーフォームを送信。2025年9月現在、スタンダードな仕様だと送料を含め約2,400ユーロでオーダー可能。
仕様、見積もりの確認
オーダーフォームで送信したアドレスにメーカーからメールが送信されてくる。その後、メールで数回やり取りの上、仕様と価格の見積もりについて確認。使用言語は基本的に英語だが、翻訳アプリなどで十分対応可能。
支払い
仕様と見積もり額に問題がなければ、支払いを完了し正式にオーダー。銀行振込とクレジットカード、PayPalが利用可能。
支払い方法は様々で、前金40%/塗装完了時60%の二分割が基本だが、全額前金払いだと5%の値引きがされる。その他にも納期に合わせての四分割、納期に合わせての毎月払いが選択可能だ。
完成
完成連絡後、ギターが発送される。2025年9月現在、納期は約14〜16ヶ月。
日本への配送にかかる時間は1週間から2週間程度。到着後、配送業者より通関手数料の請求が来る場合があるので、請求があった場合は別途支払いが必要。
総評
Skervesen Guitarsの楽器は、様々なモダンスペックが盛り込まれたまさに新世代と呼ぶべき楽器で、そのデザインセンスは他社を圧倒していると言えるだろう。まだまだ国内での知名度は低いが、機会があれば是非一度手に取っていただきたい。
ギター歴11年。
モダンでマニアックなギターが好き。
日々ギターについて研究中。
某大手楽器店にてリペアスタッフとして勤務した経験を活かして発信中。
愛器:Ibanez RG、MusicMan JP15、Skervesen Raptor、Mayones Regius、Lespky F Model、Fender Stratocaster、Gibson Les Paul Custom、Gibson ES-335、Paul Reed Smith Custom24