Relish Guitars(レリッシュ・ギター)とは
Relish Guitars(レリッシュ・ギター)は、スイス中部のルツェルンにあるギターメーカー。2013年(※1)にシルヴァン・クング(Silvan Kueng)氏とピルミン・ギガー(Pirmin Giger)氏の2人が立ち上げた。シルヴァン氏の故郷であるルツェルンは、湖畔にある「水の都」と呼ばれる都市で、美しい山々に囲まれた自然豊かな場所でギターが作られている(※2)。
現在、Relish Guitarsの製品開発は、ギガー氏が立ち上げた会社、Peppertree Visions社と共同で行っている。シルヴァン氏はRelish Brothers AG社のCEOを務めている。
※1:Twitterアカウントの開設は2012年だが、メーカーの設立は2013年であると公式サイトに記載がある。
参考:About Swiss Electriic Guiitars | Relish Guitars Switzerland
※2:ローコスト・パフォーマンス・モデルの「Trinity(トリニティ)」はインドネシア工場で生産
Relish Guitarsの特徴
アルミニウム・フレームを使ったホロウ・ボディ構造
Relish Guitarsの最大の特徴と言えるのが、アルミニウム製のフレームを使ったホロウ・ボディ構造。削り出しのアルミフレームとアルミブロックをウッド・ボディで挟んだ3層構造という、従来のギターにはない構造を持つ。アルミを使うことでクリアな音色と、長いサスティーンを生み出す。
ボディにアルミニウムを使ったギターと言えばTOKAIのTalboが有名だが木材を使っていない(ネックには木材を使用)。Relish Guitarsはアルミと木材と組み合わせたボディ構造が特徴。
ピックアップを数秒で交換できるピックアップ・スワッピング・システム
2019年のモデルから採用された「ピックアップ・スワッピング」という機能により、わずか数秒でピックアップの交換が可能になった。従来のギターではピックアップ交換に工具を必要とするが、ピックアップ・スワッピング・システムを備えたRelishギターであれば、工具なしで交換ができる。ピックアップの高さ調整もツマミを回すことで簡単に調整できるため、ドライバーは不要。
ボディバックは磁石で固定されているので簡単に取り外しが可能。
創業者のシルヴァン氏によるピックアップ・スワッピング機能の解説
ギタリストの井草聖二氏が下記の動画で行っているように、演奏中にピックアップを付け替えることも可能。
ネック折れしにくい「Bent Neck」
レスポールタイプなど角度のついたヘッドストックを作るには、木材を角度をつけて切り出しをするが、転倒などで強い衝撃が加わるとネック折れが起こりやすい。
Relish Guitarsではネック折れの問題を解決するため、独自の工法によりネック折れしにくい構造を実現している。通常のネック工法とは異なり、ネック材をBent(曲げて)してヘッドストックの角度をつけることでネック折れがしにくい構造になっている。
具体的には、ネック材を蒸気と圧力でカーブさせ、ヘッドストックの角度を付けた状態で冷やすことで角度が維持される。使用しているのは通常のメイプル材だが、「Bent Neck」は切り出すのではなく木材を曲げてヘッドストックを作っているのが大きな特徴。
シルヴァン氏によるBent Neckの特徴と工法の解説
バンブー(竹)を使った指板
Relish Guitarsでは指板材にバンブー(竹)を採用している。一般的にはメイプルやローズウッドなどが指板材に使われるため、バンブー(竹)を使ったギターは珍しい。指板はバンブー材にステンレスフレットという組み合わせ。
Relish Guitarsでは、ローズウッドとエボニーの両方の特性を兼ね備えた材を追求した結果、「Woven Bamboo (竹の繊維)」を特殊加工した竹材の開発に至った。高密度化でエボニーを上回る硬度を実現。さらに湿度や温度の変化を受けにくいというギター素材として理想的な特性を持つ。熱帯雨林の保護の観点から開発されたバンブー材で、地球環境にも配慮されている。
- 硬質な指板材
- 湿度や温度の変化に強い
- クリアな音響特性を持つ
- 柔軟性が高い
- サスティーンが豊か
- 竹は成長が早いため木材不足になりにくい
タッチ・パネル式のピックアップ・セレクター
MARY、JANEといったモデルには、17段階のタッチパネル式のピックアップ・セレクターが搭載されている。ピックアップの切り替えだけでなく、各ピックアップのブレンド具合を17段階で調整が可能。コイルタップ機能も備わっており、指二本でパネルをタッチするとハムバッカーからシングルに切り替わる。LEDで暗いステージでも瞬時にピックアップの切り替えができる。
タッチ・パネル式のピックアップ・セレクターのデモンストレーション動画
リアルなアコースティックサウンドを生み出すゴースト・ピエゾ
JANEやMARYといったモデルには、「GHOST Piezo(ゴースト・ピエゾ)」と呼ばれるピエゾ・ピックアップがブリッジに組み込まれている。ホロウ・ボディ構造と相まって、リアルなアコースティックサウンドを生み出す。トーンポットを引き上げると、ピエゾのサウンドにミッドブーストがかかる。
ゴースト・ピエゾのデモンストレーション動画。Graph Tech製のGHOST Piezoを搭載。
Relish Guitarsの主要モデル
JANE(ジェーン)
JANEはRelish Guitarsを代表するフラッグシップ・モデルで、アップデートにより進化を続けている。17段階のタッチ・パネル式ピックアップ・セレクター、工具なしでピックアップを交換できるピックアップ・スワッピング・システム、ピエゾピックアップをブリッジに取り付けたゴースト・ピエゾを搭載。JANEは、MARYと比べると空洞部分が多く、より豊かできらびやかな響きが得られる。
MARY(メアリー) / MARY ONE / MARY A ONE
MARYは、トップとバックをアルミフレームに密着させない「フローティングサンドイッチ構造」を採用したモデル。17段階のタッチ・パネル式ピックアップ・セレクター、ゴースト・ピエゾを搭載。MARYは、JANEと比べると空洞部分が少ない分、ディープなサウンドが得られる。
MARY ONEは基本スペックはMARYと同じだが、タッチパネルではなく、従来の3wayスイッチが搭載(マグネティック・ピエゾ・ミックスの切り替え)されている。また、トップ材やエッジ・カラーのバリエーションがMARYと異なる。
Trinity(トリニティ)
ピックアップ・スワッピング・システムを備えながらも価格を押さえたモデル。インドネシア工場で生産することでローコスト化を実現。ピックアップ・スワッピング・システムは一般的なハムバッカー・サイズと互換性がある。
こちらはホロウ・ボディではなく、ボディに空洞のないソリッド・ギター。タッチパネルとゴースト・ピエゾは備わっていない。