ワシントン条約とは
ワシントン条約は、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」のことで、ギター用の木材においても、この条約で規制され入手が困難なものが少なくない。英語では「Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora」であり、この頭文字をとって「CITES(サイテス)」と呼ばれることも多い。
ワシントン条約の歴史
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1972年ストックホルムで開催された国連人間環境会議において、野生動植物の輸出入に関する勧告を受け、国際自然保護連合(IUCN)とアメリカが中心となり、国際取引の規制のための条約の作成が進められる。
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1973年ワシントンD.C.にて81か国が参加した「野生動植物の特定の種の国際取引に関する条約採択のための全権会議」が開催。3月3日に採択される。ワシントンで採択されたことから、通称:ワシントン条約と呼ばれている。
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1975年4月2日に発効の条件を満たし、7月1日に発効。
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1980年日本の国会で条約の締結が承認され、11月4日に発効。(1973年に署名していたが、各所の調整等を経てこの年に承認された)
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〜現在2021年8月現在、183の国と地域が締結国となっている。
条約の内容と規制されている主な木材(2021年8月現在)
ワシントン条約では、野生動植物が国際取引で過度に利用され絶滅することを防ぐため、特定の種をⅠ、Ⅱ、Ⅲの3種類の「附属書」に分類し規制を行っている。それぞれの附属書ごとに基準と規制内容が異なり、2〜3年に1度行われる締結国会議において、附属書への追加や記載の変更といった話し合いが行われている。
同じ種でも、特定の国や地域で指定されている場合や、複数の附属書にまたがって記載されている場合などもある。また、加工製品も規制の対象に含まれるため、ギターの場合は原材料となる木材のみならず、製作されたギターも規制対象となる。
附属書Ⅰ
記載基準:絶滅のおそれのある種で取引による影響を受けている又は受けるおそれのあるもの。
規制内容:原則的に国際商取引はできず、学術研究目的であれば可能。輸出国・輸入国双方の許可証が必要。
附属書Ⅱ
記載基準:現在は必ずしも絶滅のおそれはないが、取引を規制しなければ絶滅のおそれのあるもの
規制内容:商業目的の取引は可能。輸出国の輸出許可証が必要。
附属書Ⅲ
記載基準:締約国が自国内の保護のため、他の締約国・地域の協力を必要とするもの
規制内容:商業目的の取引は可能。輸出国の輸出許可証、又は原産地証明書等が必要。
近年の変更
2017年の改正において、全てのローズウッド種が附属書Ⅱに追加され国際間取引に制限がかかっていたが、2019年11月から、マメ科ツルサイカチ属(ローズウッド)とブビンガ属3種を使用した楽器等の輸出について改正があり、これらを用いた楽器(完成品、部品、付属品含む)が条約の規制対象から除外された。木材としては附属書Ⅱに掲載されたままではあるが、楽器に関しては規制が緩和されたことになる。(附属書Ⅰのブラジリアンローズウッドについては変化無し)