前回作業でセルバインディングの溝掘り(外セル+カスタムセル)ができたので、今回はアーチトップ加工をします。
↓前回作業
左側がわいのボディ。
右側がアーチトップの加工途中のサンプル。
アーチトップはいきなり曲線をつけるのではなく、まず右側のサンプルのように何段階かの段差をつけるところから始めます。
アーチトップは、まずはアーチの「等高線(とうこうせん)」を罫書き、ハンディルーターで階段状に加工していきます。
レスポールやPRSなど、ギターによってアーチトップの形状が異なります。
1段ずつの高さが均等なもの、等高線の間隔が均等なもの、ボディの外側に向けて返しが付いているものなど、形状は様々です。
今回作るのはレスポールタイプで、1段ずつの高さが均等なもので等高線を描きたいと思います。
アーチトップ用の治具があるので、今回はこれを使って等高線を罫書きをします。
これは粗加工なので、そこまでシビアに調整する必要はありませんが、仕上がりの形をイメージしながら罫書きの位置を決めていきます。
サイズが異なる罫書き治具を使い、段差をつけるための罫書きをしていきます。
重なっていて見えづらいですが、各治具にエンドからの距離が書かれています。
7枚の治具を使って7本の線を書きました。
ただ、サンプルには内側から2本目と3本目の間にもう1段あるので、同じ位置に手書きで等高線を足しました。
おそらく傾斜を調整するために2本目と3本目の間に1本等高線を加えたのでしょう。
ハンディルーターで掘るためのセッティングをします。
ジョイントザグリの中にも当て木を敷いています。
アーチトップの粗加工には、片手ハンドルのルーターを使います。
片手ハンドルのルーターは左右で形が異なるので、掘る時は写真のようにハンドルが付いている側を軸にします。
傾いてしまうと深さにバラツキが出てしまうので、軸になる側の平面を保ちながら掘っていきます。
下記の赤枠の部分は、後でネック角に合わせて傾斜をつけるので、ルーターでは掘りません。
まずは一番外側から掘っていきます。
今回のアーチは外側の平面部分が広いので、一番外側は掘る面積が広く、何周もしなければなりません。
掘る深さは、今回の場合はカスタムセルの溝
一気に目的の深さまでは掘れないので、2mmずつ下げて掘っていくので、一番時間がかかる箇所です。
一番外側はマホガニーバックの上面から6mmの高さの位置まで掘ります。
つまり、バインディングが6mmなので、その深さまで掘るということです。
今回は内セルにカスタムセルを巻くので内側にもう1段ありますが、カスタムセルも外セルと同じ高さになるので、マホガニートップから6mmの高さまで掘ればOKです。
内側の段にカスタムセルをあててみるとこんな感じです。
カスタムセルの高さが罫書きのラインを超えていますが、はみ出ている部分は巻いた後に削ってしまいます。
カスタムセルは半分くらいは削ってしまうことになるそうなので、罫書きはこれでOKです。
一番外側の1週目が終わったところです。
まだ深さ2mmしか掘っていません。
粗加工なので、罫書き線きっちりに掘る必要はありませんが、罫書き線を残しすぎると他の段の幅に影響するので、ある程度までは仕上げました。
一番外側の等高線を目的の深さまで掘り終えました。
ボディエンド部分を掘っているときにルーターが少し傾き、部分的に深く掘ってしまいました、、、
マホガニーバックの上面から6mmの高さの罫書き線は超えていないので、許容範囲内です。
これが罫書き線を超えて深く掘ってしまっていると、、、アーチトップの形が変わってしまう可能性があります。
なので、一番外側は最も慎重に掘らなければならない箇所なのです。
深さは約6.5mm。
目標値は6mmですが、調整する余地を残すために0.5mmほど浅めに掘りました。
続いて外側から2段目を掘りました。
2段目以降は、前の段と1mmの段差がつく深さまで掘ります。
測ってみると1mmちょっと。
これも粗加工なのできっちり1mmでなくてもOKですが、段差が高いすぎると内側の等高線の段差が取れなくなってしまう可能性があるので、できれば1mmちょっとの段差で掘っていきたいところ。
あと2段。
内側にいくほど掘る範囲が狭い&掘る深さは浅くて済むので楽です。
全段掘り終えました。
最後の段、一番内側の等高線は1mmの深さを取れなかったのですが、少しでも段差をつけておく必要があるので、0.2〜0.3mmくらいの浅い段差をつけました。
曲線は綺麗ではないですが、どうせ段差はなくなるのでこれくらい粗くてもOKです。
ルーターでピックアップの端まで削っていますが、レスポールタイプはフロントピックアップ周りはセンターに向かって傾斜がついているので、削ってしまってOKです。
次は鉋で段差を落として少し滑らかなアーチに近づけていきます。
段差落としには反鉋を使います。
木目を見つつ、段差の曲線に沿って削っていきます。
反鉋だと刃が入らない箇所は四方反鉋を使います。
ただし、四方反鉋は刃が入りやすいがゆえに削り過ぎてしまう恐れがあるので、刃が入る箇所はできるだけ反鉋を使って削ります。