UV塗装(UVフィニッシュ)とは
UV塗装は「UltraViolet=紫外線」を用いた塗装方法のこと。専用の塗料に紫外線を当てて硬化させる塗装で、薄く硬い塗膜や環境に良い点などが特徴。
大手のギターメーカーでは、アメリカのTaylor(テイラー)社がUV塗装を採用していることで知られる。Taylor社のあるカリフォルニア州では、90年代に環境汚染のあるラッカー塗装についての規制が厳しくなったため、それまで用いていたニトロセルロースラッカーによる塗装をやめ、環境に優しいUV塗装を開発・採用し始めた。UV塗装はポリエステル素材を用いた塗料を使っており、有機溶剤を必要としないことから従来の塗装と比べて環境にも人体にも負担がかからないとされている。
90年台半ばよりTaylor Guitarsは紫外線硬化型UV-Curedフィッシュを開発・採用しています。 https://t.co/auBHHMlsn4
— Taylor Guitars Japan (@TaylorGuitarsJP) October 27, 2021
Taylor以外でも、LarriveeやMatonなど、アコースティックギターで採用されることが多い。
こちらはLarribee D-09に渋谷店でL.R.Baggs Element VTCピックアップを搭載した限定仕様!グロスUVフィニッシュ、ローズウッド採用のドレッドノートサイズで30万を切るお買い得なエレアコです!
^渋谷店https://t.co/5s3XOXRJMr pic.twitter.com/lqgs3bWtz2— イシバシ楽器 (@ishibashimusic) July 9, 2018
トミーシグネチャーも再入荷!超レアなトミーシグネチャーのドレッドカッタウェイ“TE-1”も!同モデルはUVフィニッシュのフルグロス!#メイトン pic.twitter.com/cQ9knB0C33
— Maton Guitars Japan🦘 (@matonjapan) July 29, 2019
環境・人体に優しいことから、一般的には家具やフローリングに使われることも多い他、車の塗装や、硬化が早いことからネイル(爪)などにも用いれられている。
UV塗装の特徴
UV塗装のメリット
- 極薄塗装が可能
- 塗膜が硬く丈夫
- 経年変化しにくい
- 環境・人体に優しい
極薄塗装が可能
UV塗装では、他の塗装方法と比べて塗膜が非常に薄いのが特徴。塗膜が厚くなると、それだけ楽器の振動を邪魔してしまうことになるため、塗膜の薄さは楽器本来のサウンドを引き出してくれるということになる。
塗膜が硬く丈夫
UV塗装によって硬化した塗膜は、非常に硬く丈夫であることも大きな特徴。傷が付きにくいので、美しさを長く保つことができる。
経年変化しにくい
ラッカー塗装の場合、白いギターが黄ばんでしまうなど経年変化によって徐々に色が変わってしまう。UV塗装は経年変化が少なく、買った時のカラーを長期間保つことができる。熱や薬品にも強く、傷の付きにくさもあわせると楽器をキレイなまま保ちたい人には大きなメリットとなる。逆にビンテージギターのように色が変わっていくことを楽しみたいという人には不向きかもしれない。
環境・人体に優しい
樹脂系の塗料の場合は硬化する際にCO2を排出したり、大気汚染の原因となる揮発性有機化合物が含まれていたりするが、UV塗料の場合はそういったものを含まず環境にも人体にも優しい塗装方法と言える。
UV塗装のデメリット
- コストが高くなる
- 剥がれやすい
- 傷が付いた場合、補修するのが難しい
コストが高くなる
UV塗装はわずか60秒程度で硬化することから、従来の塗装方法と比べて塗装にかかる時間という意味ではコストがかからない。しかし、塗料そのものが高いことと、紫外線を当てるための大掛かりな設備を用意する必要もあるため、結果的にコストは高くなってしまう。
Taylorのような大手のメーカーのように大量生産するのであれば、設備投資のコストも回収できるが、小さなメーカーで導入するのは難しい。
Taylorの工場でのUV塗装の様子
剥がれやすい
表面の塗膜は非常に硬く丈夫なUV塗装だが、一方で塗料と下地との食いつきはあまり良くないようで、塗装が剥がれてしまうという声が聞かれている。
補修するのが難しい
傷が付きにくいUV塗装ではあるが、傷が付いてしまった場合、元通り補修するのは非常に難しくなってしまう。ラッカー塗装の場合、小さな傷であれば周りの塗装を少し溶かして傷を埋めるとタッチアップという方法で簡単に補修することができるが、UV塗装の場合はそういった補修はできないため、専門的な知識と技術が必要となる。