ギター用語

UV塗装(UVフィニッシュ) − 経年変化しにくい極薄塗装

UV塗装(UVフィニッシュ)とは

UV塗装は「UltraViolet=紫外線」を用いた塗装方法のこと。専用の塗料に紫外線を当てて硬化させる塗装で、薄く硬い塗膜や環境に良い点などが特徴。

大手のギターメーカーでは、アメリカのTaylor(テイラー)社がUV塗装を採用していることで知られる。Taylor社のあるカリフォルニア州では、90年代に環境汚染のあるラッカー塗装についての規制が厳しくなったため、それまで用いていたニトロセルロースラッカーによる塗装をやめ、環境に優しいUV塗装を開発・採用し始めた。UV塗装はポリエステル素材を用いた塗料を使っており、有機溶剤を必要としないことから従来の塗装と比べて環境にも人体にも負担がかからないとされている。

Taylor以外でも、LarriveeやMatonなど、アコースティックギターで採用されることが多い。

環境・人体に優しいことから、一般的には家具やフローリングに使われることも多い他、車の塗装や、硬化が早いことからネイル(爪)などにも用いれられている。

UV塗装の特徴

UV塗装のメリット

  • 極薄塗装が可能
  • 塗膜が硬く丈夫
  • 経年変化しにくい
  • 環境・人体に優しい

極薄塗装が可能

UV塗装では、他の塗装方法と比べて塗膜が非常に薄いのが特徴。塗膜が厚くなると、それだけ楽器の振動を邪魔してしまうことになるため、塗膜の薄さは楽器本来のサウンドを引き出してくれるということになる。

塗膜が硬く丈夫

UV塗装によって硬化した塗膜は、非常に硬く丈夫であることも大きな特徴。傷が付きにくいので、美しさを長く保つことができる。

経年変化しにくい

ラッカー塗装の場合、白いギターが黄ばんでしまうなど経年変化によって徐々に色が変わってしまう。UV塗装は経年変化が少なく買った時のカラーを長期間保つことができる。熱や薬品にも強く、傷の付きにくさもあわせると楽器をキレイなまま保ちたい人には大きなメリットとなる。逆にビンテージギターのように色が変わっていくことを楽しみたいという人には不向きかもしれない。

環境・人体に優しい

樹脂系の塗料の場合は硬化する際にCO2を排出したり、大気汚染の原因となる揮発性有機化合物が含まれていたりするが、UV塗料の場合はそういったものを含まず環境にも人体にも優しい塗装方法と言える。

UV塗装のデメリット

  • コストが高くなる
  • 剥がれやすい
  • 傷が付いた場合、補修するのが難しい

コストが高くなる

UV塗装はわずか60秒程度で硬化することから、従来の塗装方法と比べて塗装にかかる時間という意味ではコストがかからない。しかし、塗料そのものが高いことと、紫外線を当てるための大掛かりな設備を用意する必要もあるため、結果的にコストは高くなってしまう。

Taylorのような大手のメーカーのように大量生産するのであれば、設備投資のコストも回収できるが、小さなメーカーで導入するのは難しい。

Taylorの工場でのUV塗装の様子

剥がれやすい

表面の塗膜は非常に硬く丈夫なUV塗装だが、一方で塗料と下地との食いつきはあまり良くないようで、塗装が剥がれてしまうという声が聞かれている。

補修するのが難しい

傷が付きにくいUV塗装ではあるが、傷が付いてしまった場合、元通り補修するのは非常に難しくなってしまう。ラッカー塗装の場合、小さな傷であれば周りの塗装を少し溶かして傷を埋めるとタッチアップという方法で簡単に補修することができるが、UV塗装の場合はそういった補修はできないため、専門的な知識と技術が必要となる。

タッチアップ
タッチアップ − 塗装面の傷や割れを目立たなくするための補修タッチアップ(ギター)とは・意味 「タッチアップ」は、塗装面の傷や割れ、剥がれといった箇所を目立たなくするための部分塗装のこと。修理し...
ラッカー塗装
ラッカー塗装とは ‐ エレキギターにおいて最もポピュラーで伝統的な塗装方法ラッカー塗装とは 「ラッカー塗装」は、エレキギターにおいて最もポピュラーで伝統的な塗装方法。「ニトロセルロースラッカー塗料」を用いた塗...
ポリウレタン塗装
ポリウレタン塗装とは ‐ ギターやベースのポピュラーな塗装方法の一つ。ポリウレタン塗装とは 「ポリウレタン塗装」は、ポリウレタン樹脂塗料を用いた塗装方法。ギターやベースのポピュラーな塗装方法の一つ。二液の...
ポリエステル塗装
ポリエステル塗装とは ‐ 厚い塗膜を形成できる、安価な塗装方法ポリエステル塗装とは ポリエステル塗装は、塗装方法の種類の一つ。塗料としての正式な名称は「不飽和ポリエステル樹脂塗料」。通称は「ポリ塗...
シェラック塗装(セラック塗装)とは ‐ ラックカイガラムシの分泌する物質を使った塗装シェラック塗装(セラック塗装)とは 「シェラック塗装(セラック塗装)」は、ラックカイガラムシという虫が分泌した樹脂状の物質を使った塗装...
ABOUT ME
稲垣 健太(ケンタトニック)
ギター辞典コード辞典ボイトレ・音楽用語辞典の運営者。

音楽関係の仕事の経験、ギター製作の経験、音楽教室に通った実体験をもとに、音楽に役立つ情報を発信。

■音楽歴
中学2年生の時にギターを始める
高校1年生の時にドラムを始める
関西外国語大学外国語で軽音楽部に所属し、ボーカル、ギター、ベース、ドラムを演奏
39歳からボイトレに通い始める
42歳でギタークラフトを始める
└2023年4月にギタークラフトの専門学校・ESPギタークラフトアカデミー大阪校(GCA)に入学
└ギター製作やリペアの専門技術・専門知識を習得中
└ギター製作の経験をほぼ毎日日記で更新
ギタークラフト製作日記

■音楽関連の仕事歴
[2006〜2009年]
大手CD・レコード販売店でロック、ジャズの仕入・販売を担当。
[2011年〜]
フリーランスのWebライター・Webディレクターとして開業。
大手音楽教室からの委託でボイトレサイトの運営、ボイトレ記事の執筆・編集に携わる。

■音楽教室の通い歴
[1995〜2000年まで]
某大手ギター教室に通う
[1997〜2002年まで]
某大手ドラム教室に通う
[2020年〜現在]
某大手音楽教室のボイトレ・話し方コースに通い中
ESPギタークラフトアカデミーにて月3回プロギタリストによる演奏授業を受講

■愛機
Stilblu #036 / #039 /#099
g'7 special(g7-TLT Type 2S)
Nashguitars S-57
Tom Anderson(Drop Top Classic -Deep Tobacco Fade)
TMG Gatton Thinline
Fender Custom Shop 1956 Stratocaster NOS
Gibson USA Exclusive Model / Les Paul Standard 60s Honey Lemon Burst

所有ギター一覧

■製作したギター
ギタークラフトアカデミー第1作目:
ポリゴンライン
ギタークラフトアカデミー第2作目:
Stand-Alone
ギタークラフトアカデミー第3作目:
Thin-Marauder


■好きなバンド
U2、Sigur Ros、THE 1975、Mr.Children、the band apart、くるり、SIAM SHADE、VAN HALEN

■ブログ
運営者情報