半音下げチューニングとは
ギターの「半音下げチューニング」は、レギュラーチューニング(通常のチューニング)から、全ての弦を各弦半音づつ下げてチューニングした状態のこと。バンドスコアなどでは曲の最初に「Half Step Down(ハーフ・ステップ・ダウン)」や「Half Down」と書かれている場合が多い。「Half」=「半音」を「Down」=「下げる」ということなので、半音下げチューニングを意味している。
レギュラーチューニングでは6弦から『E・A・D・G・B・E』に合わせるところを、半音づつ下げると『E♭・A♭・D♭・G♭・B♭・E♭』となる。
6弦 | 5弦 | 4弦 | 3弦 | 2弦 | 1弦 | |
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レギュラーチューニング | E | A | D | G | B | E |
半音下げチューニング | E♭ | A♭ | D♭ | G♭ | B♭ | E♭ |
ギターでは各フレットが半音ごとに並んでいるので、半音下げにするということは、全ての音が半音づつ低い音にズレていくということになる。
半音下げチューニングの方法
半音下げチューニングのやり方は簡単。通常のチューニングと同様にチューナーやアプリを使って、各弦を下記のように半音下げてチューニングしていくだけ。チューナーによっては半音下げモードが搭載されているものもあるので、説明書等で確認し設定しよう。
前項ではわかりやすくするため♭で統一された表記を用いたが、実際のチューナーでは♯で統一されているか、♯と♭が混合している場合のどちらかであることが多い。使用するチューナーの設定に合わせて各音を確認してチューニングしていこう。
6弦 | 5弦 | 4弦 | 3弦 | 2弦 | 1弦 | |
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♯統一表記 | D♯ | G♯ | C♯ | F♯ | A♯ | D♯ |
♯♭混合表記 | E♭ | G♯ | C♯ | F♯ | B♭ | E♭ |
ギター自体のチューニングは変えずに、『ピッチシフター』と呼ばれるエフェクターを使って音程をズラす方法もある。ピッチシフターについては該当の記事で詳しく解説。
半音下げチューニングをする理由、メリット・デメリット
なぜ半音下げチューニングをする必要があるのか?たった半音下げただけで、どんな意味があるのか?と、疑問に思う方も多いのではないだろうか。わざわざ半音下げることのメリットと、デメリットを見てみよう。
半音下げチューニングのメリット
- 重厚なサウンドを表現できる
- ヴォーカルの音域に合わせられる
- 弦のテンションが下がり、押弦しやすくなる
- ジャズの演奏がしやすくなる
重厚なサウンドを表現できる
半音下がることによって、演奏できる一番低い音も半音下がることになる。低音域が半音広がるということなので、その分ヘヴィなサウンドを作り出すことができる。同時に、弦のテンションが下がった独特なダルダルの音も、ヘヴィな印象を与えてくれる。
特にヘヴィメタルなどの重低音がポイントになるジャンルで半音下げがよく用いられるのはヘヴィなサウンドを求めた結果とも言える。
ヴォーカルの音域に合わせられる
通常はレギュラーチューニングで演奏していた曲を半音下げチューニングにして同じように演奏することで、曲のキーを下げることができる。カラオケでキーを下げるのと同様で、元のキーのままだとヴォーカルの高音域が歌えないといった際、半音下げてあげることで歌いやすくすることができる。
弦のテンションが下がり、押弦しやすくなる
ペグを緩めてチューニングを下げていくと同時に、弦のテンション(張力)も下がっていく。要するにピンと張っていた弦が少しダルダルの状態に近づくということ。テンションが下がると弦を押さえるのに必要な力も下がり、特にチョーキングやビブラートがしやすくなるというメリットがある。
半音下げチューニングは、ジミ・ヘンドリックスが始めたとも言われているが、当時は現在よりも太い弦が主流だった。弦が太いとそれだけテンションも高くなるため、半音下げチューニングによってテンションを下げることはプレイにも大きなメリットだったというわけだ。
ジャズの演奏がしやすくなる
ジャズにおけるメインの楽器としてよく用いられる金管楽器のトランペットやテナーサックスは「B♭管」、アルトサックスは「E♭管」であることから、♭系のキーで演奏される楽曲が多い。これをコピーする際には、半音下げチューニングにして開放弦を♭にすることで演奏しやすくなる。
半音下げチューニングのデメリット
- 高音域が狭まる
- 演奏感覚が狂う
- 締まりの無いサウンドになる
高音域が狭まる
低音域が広がるというメリットは、裏返せば逆に高音域は半音分狭まってしまうということになる。ギターソロなどで一番高い音が必要となった時に、半音下げチューニングだとその半音分足りないという事態もあるかもしれない。
演奏感覚が狂う
弦のテンションが下がりチョーキングなどがしやすくなるというメリットを紹介したが、こちらも裏を返せばレギュラーチューニング時の演奏感覚とのズレが生じるというデメリットになる。レギュラーチューニングの際と同じ感覚でチョーキングをすると、思っている以上に音程を上げすぎてしまう可能性がある。チューニングの違いによる感覚の変化を意識したプレイが必要となる。
締まりの無いサウンドになる
テンションの下がったヘヴィなサウンドは、逆に言えば締まりの無いサウンドとも言える。そもそもそういったサウンドを求めて半音下げにしているということなら気にする必要はないかもしれないが、このデメリットを解消したいなら、弦のゲージを上げて太くするという手もある。弦を太くすればその分テンションは強くなる。