タイムレスティンバーとは
「タイムレスティンバー(Timeless Timber)」は、アメリカの五大湖に沈んでいた丸太を引き揚げ、乾燥させたヴィーンテージウッドの名称。アメリカのTimelessTimber社が取り扱っている木材で、家具材のほか、ギターのネック材やボディ材などに使われる。
1800年代、アメリカの伐採会社は、五大湖周辺で伐採した丸太を水路を利用して下流へと運搬していたが、その途中で一部の丸太が湖底へと沈んだ。100年以上もの間、湖底で眠っていた丸太を引き揚げ、乾燥させて製材したのがタイムレスティンバーである。
五大湖の湖底は氷点下の温度と低酸素であるため、木材には保存には最適な環境であった。そのうえ、水中のバクテリアが木材の導管内の不純物を食べ尽くしたことにより、弦楽器に使用したときの鳴りの良さにつながると言われている。木目が詰まったハードウッド(堅い木材)で、硬度が高いのも特徴。
※「timeless(タイムレス)」→「永遠の」「時代を超越した」という意味
※「timber(ティンバー)」→「(製材した)材木」という意味
タイムレスティンバーは商標としての名前なので、水中から引き揚げられた木材の総称というわけではない。次項で解説する「アクアティンバー」のように、取り扱っているメーカーや産地によって名称が異なる。シンカー材(sinker:「沈んだ」の意)と呼ばれることもある。
アクアティンバーとは
「アクアティンバー(Aqua Timber)」は、アメリカのAqua Timber社が取り扱っている木材の名称。アメリカの五大湖、ジョージア湾のほか、北アメリカを通る水路の底に眠っている木材を引き揚げ、乾燥して作られる木材。
1850年~1900年代初頭に伐採された丸太が輸送の途中に水中へ落ち、100〜150年ものあいだ冷たい水中で眠り続けていた。沈んでいた丸太の樹齢は500〜1,000年と言われている。生成される経緯はタイムレスティンバーと同じだが、元々の樹齢や水中の環境が異なるため、ギター材に使用したときに音響特性が変わると言われる。
ギター材として使われるタイムレスティンバーやアクアティンバー
フジゲンでは長らくタイムレスティンバーを使用していたが、資源に限りがあり枯渇してきたため、現在は同様の性質を持つアクアティンバーに切り替えている。
ボディとネックにアクアティンバーを使用したギターの試奏動画
Sugi Guitarsでは、多くのモデルでアクアティンバーメイプルを使用している。タイムレスティンバーと表記されているモデルもある。
ネックにアクアティンバーを使用したモデル・Stargazerの試奏動画。
Sugi Guitarsの特徴やこだわりは、以下の記事で詳しく紹介している。
HISTORYで使用しているヘリテイジウッド
島村楽器のオリジナルギターブランド「HISTRY」もタイムレスティンバーを使用していたが、入手が困難になったため、「ヘリテイジウッド」と呼ばれる同様の木材を使用している。木目が詰まっているためネックの反りが起こりにくく、バクテリアが導管内の不純物を食べ尽くしたことで倍音が豊かにトーンが得られるそうだ。
※「Heritage(ヘリテイジ)」→「遺産」という意味
参考:Heritage Wood(ヘリテイジウッド) - History
「HISTRY」では、HS・HGシリーズの全モデルのボディ材やネック材にヘリテイジウッドを使用している。
ヘリテイジウッドを使用しているモデルには、ヘッドストックの裏に「Heritage Wood」のデカールが貼られている。
ネックにヘリテイジウッドを使用したHS-SVの試奏動画