フェイザーとは
フェイザー(phaser)は、原音に位相をズラした音を加えることで、波のようなうねりを作り出すモジュレーション系のエフェクター。「フェイズシフター」とも呼ばれる。
「フェイズ」は「位相」を意味し、信号がフェイザー内部の「位相シフト回路」を通ることで位相がずらされる。原音と位相のズレた音をミックスすることで周波数のバランスが変わり、独特のうねりを生み出すこととなる。
フェイザーは、Queenのデビュー曲『Keep Yourself Alive』のイントロで用いられている。
フェイザーの誕生
フェイザーはもともと、ハモンドオルガン等で使われるロータリースピーカー(レスリースピーカー)の効果を電子的に再現するために開発されたもの。同様の効果を得ることはできなかったものの、独特のサウンドが生まれたため、フェイザーとして世に広まっていった。
ロータリースピーカーは、高音と低音の2つのローターが内部で別々に回転することによって音の広がりを生み出すスピーカー。
エリック・クラプトンの『Wonderful Tonight』では、イントロでロータリースピーカーが用いられている。フェイザーとはまた異なるサウンド。
フェイザーとフランジャーの違い
フェイザーと似た効果を得られるエフェクターに「フランジャー」があるが、フェイザーが原音と位相を変えた信号とを干渉させるのに対し、フランジャーは原音と遅延させた音とを干渉させるもの。
フランジャーの方がより奥行きのあるサウンドになり、フェイザーの方は遅延を用いていない分リズムがタイトでカッティングの際に使用しやすい。
フェイザーのステージ、設定
ステージ(段数)
フェイザーを選ぶ際には「ステージ」や「段数」と呼ばれるものがある。内部の位相シフト回路の数のことで、これが増えるほどに重なり合う波形も増えていき、より複雑なうねりをもたらすようになる。
ステージは必ず偶数になっており、ステージ数が固定のエフェクターもあれば、切り替えられるものもある。BOSSのPhase Shifter PH-3は、4,8,10、12の4種類のステージを選択できる。
設定
フェイザーの設定は機種によって様々だが、「RATE」や「DEPTH」を設定できるものが多い。「RATE」や「SPEED」は同じ意味で、文字通り揺れの速さを設定する。「DEPTH」は、揺れの深さを設定するもので、大きくすればより振り幅の大きい揺れとなり、効き目を強く感じられるようになる。「FEEDBACK」は、回路に再度信号を送る具合を調整するツマミで、エフェクトの効き具合が変化し、大きく設定するとエグみが増す。
- RATE、SPEED → 効果のサイクルを設定
- DEPTH、WIDTH → 効果の深さを設定
- FEEDBACK、RESONANCE → 変化量を設定
定番のフェイザー
MXR / phase 90
コントロールが「SPEED」のツマミだけというシンプルなMXRの「phase 90」。1970年代に誕生した元祖コンパクト・フェイザーにして、今なお定番として愛され続けている。
phase 90を用いて活躍したエドワード・ヴァン・ヘイレンのシグネイチャーモデル「EVH phase 90」。カラーリングはもちろん、「Script」ボタンを押すことで、エディが使用していた頃のヴィンテージなphase90サウンドに切り替えることができる機能が追加されている。
VAN HALENの『Aint Talkin' Bout Love』の印象的なイントロでもフェイザーが使われている。
electro-harmonix / Nano Small Stone
1970年代に登場し、スムーズで温かみのある揺れが人気の名機「Small Stone」をコンパクトサイズにした製品。「RATE」のツマミと「Color」のスイッチだけというシンプルなコントロール。「Color」のスイッチは上にするとエフェクトが強調される。
BOSS Phase Shifter PH-3
1977年に登場したフェイズシフター「PH-1」から進化した「PH-3」は、2000年の発売以降モデルチェンジ無く現在に至り、BOSSのフェイズシフターとしての完成形とも言える製品となっている。
4種類に切り替えられるステージ設定に加え、上昇感や下降感を演出する「FALL」「RISE」モード、シンセサイザー風の効果が得られる「STEP」モード、7種類のフェイザーで多彩なサウンドを作り出すことができる。