フランジャーとは
フランジャー(flanger)は、原音に遅延させた音を干渉させることでうねりを加えるモジュレーション系のエフェクター。歪ませた音にフランジャーを加えると「ジェットサウンド」と呼ばれる独特なサウンドを生み出す。
VAN HALENの『And The Cradle Will Rock』。ジェットサウンドと言えばこの曲の冒頭部分。強烈なうねりがとても印象的。
フランジャーの誕生、由来
フランジャーは、「ADT(Artifical Double Tracking)」と呼ばれる録音技法から生まれたエフェクター。ADTは1回のテイクを2台のレコーダーで録音し、それらを微妙にズラして重ねることでサウンドを強調させるという手法。
1960年代、ビートルズのレコーディングでエンジニアをしていたケン・タウンゼントが、オープンリール・テープレコーダーを2台同時に再生し、片方のテープの縁に手で触れることで遅延を発生させてサウンドに変化を与える方法を考案したとされている。
テープ・リールの縁のことを「フランジ(flange)」と呼ぶことから、ジョンレ・ノンがこれを「ケンのフランジャー」と呼び、好んで使ったのだという。ギター用のエフェクターとしては、1970年代後半にMXRから登場した。
1966年にリリースされたビートルズのアルバム『REVOLVER』では、多くの曲のヴォーカル・トラックにADTが用いられている。
コーラスやフェイザーとの違い
仕組みとしてはコーラスと同じであるため、エフェクターの系統としてはひとまとめにされることも多い。コーラスよりも遅延が短くフィードバックを増したのがフランジャーで、独特のうねりで強烈な印象を与えたい時に用いられる。
また、得られる効果としてはフェイザーとも似ている。フェイザーが原音と位相を変えた信号とを干渉させるのに対し、フランジャーは原音と遅延させた音とを干渉させる。
定番フランジャー
MXR / M117R flanger
エドワード・ヴァン・ヘイレンが使用していたことで知られる名機。「M117」を復刻したもので、フェイザーのような軽やかなサウンドから、強烈なジェットサウンドまでを4つのつまみで表現可能。
エディのシグネイチャー・モデル「EVH117」。デザインだけでなく、『EVHボタン』を押すことでエディのサウンドを忠実に再現することができる。
BOSS / Flanger BF-3
4つのモード切り替えで多彩なフランジャー・サウンドを得ることができる一台。スタンダードなフランジャー効果の「STANDARD」、過激なジェットサウンドの「ULTRA」、スライサー効果を加える「GATE/PAN」、ペダルを踏んでいる間だけエフェクトを掛けることができる「MOMENTARY」の4モード。
tc electronic VORTEX FLANGER
基本的なフランジャーサウンドの「FLANGER」モードと、2台のテープデッキによるクラシックなフランジャーを再現する「TAPE」モードの2タイプを選択可能。また、プロのミュージシャンがエディットしたサウンドをダウンロードして再現できる「TonePrint」機能にも対応している。
コンパクトサイズの『VORTEX MINI FLANGER』。モード選択等はなく機能は簡略化されているが、高品質なサウンドはそのままに、TonePrintにも対応している。