Tune-o-matic Bridge(チューン・オー・マチック・ブリッジ)とは
Tune-o-matic(チューン・オー・マチック)は、Gibson社が開発したブリッジ。略称/通称「TOM」。オクターブチューニングをネジで調整できることから「Tune-o-matic」という名がある。
Tune-o-maticは1950年代にGibson社初のフル・アジャスタブル・ブリッジとして市場に登場し、レス・ポールをはじめ多くのGibson製品に搭載されてきた。一口にTune-o-maticと言ってもABR-1タイプ(ワイヤーあり/なし)、NASHVILLEタイプなどいくつか種類があり、さらに他社製もあるので形状は多岐にわたる。
GretschのAdjust-o-maticなどTune-o-maticに似た製品もあるが、Tune-o-maticの特許はGibson社が持っている(後述)。
Tune-o-matic Bridgeの歴史
Tune-o-matic Bridgeは1950年代、当時Gibson社の社長を務めていたテッド・マッカーティ氏によって開発された。
Tune-o-matic Bridgeは、1953年にアーチトップギターのGibson Super 400に搭載されたのが初めて。1954年にレス・ポール・カスタムに、1955年にレス・ポール・ゴールドトップに搭載された。
最初に登場したのは「ABR-1」という型番のブリッジであった。1975年にGibsonの工場がカラマズーからナッシュビルに移転した際に「Nashville Tune-o-matic Bridge」が導入された。
Tune-o-matic Bridgeの特徴
弦ごとに個別に調整可能なサドルを搭載。1〜3弦と4〜6弦でサドルの方向を逆にすることで可動範囲を広げており、ネジを回すことで弦ごとのオクターブチューニングができる。当初はサドルを固定するリテイナー(ワイヤー)が付いていなかったが、1960年代から付くようになった。
サドル可動部分は、バイオリンの弓のテンション調整の仕組みを参考に開発したそうだ。
※バイオリンの弓には毛の張りを調整するスクリュー(ネジ)が付いており、巻いたり緩めたりして毛の張り具合を調整する
Tune-o-matic Bridgeの特許申請は1952年7月5日にテッド・マッカーティ氏の名前で提出されている。特許認定は1956年4月3日。特許番号は2,740,313。
画像:Bridge for stringed musical instruments / Google Patents
こちらはスタッドブリッジ/テイルピースの特許。これもテッド・マッカーティ氏が開発したもので、1953年1月21日に特許申請が出され、1955年8月2日に特許が認可された。特許番号は2,714,326。
2本のスタッド(弦高を調整するパーツ)に直角に配置された2本のビスでオクターブチューニングができるが、弦ごとの調整はできない。1955年にサドルごとにオクターブチューニングができるTune-o-matic Bridgeが生まれたため、テイルピースに転用されることに。
画像:Stringed musical instrument of the guitar type and combined bridge and tailpiece therefor / Google Patent
Tune-o-matic Bridgeの種類
ABR-1
「ABR-1」は、最初に開発されたTune-o-matic Bridgeの型番。ビンテージのGibsonギターに搭載されている。Historic Collectionで「ABR-1」を搭載しているモデルもある。
「ABR-1」ではサドル脱落防止にリテイナー(ワイヤー)を使っているが、そのワイヤーが共振するトラブルが起こりやすい。Historic Collectionなどに搭載されている復刻版には、ワイヤーなしの「Non-Wire ABR-1」がある。
ワイヤーありの「ABR-1」
ノンワイヤーの「ABR-1」
Nashville Tune-o-matic Bridge
1975年から販売しているTune-o-matic Bridge。前述の通り、1975年にナッシュビル工場へ移転した時期から生産され始めた。通称「ナッシュビルTOM」「NTOM」。
サドル脱落防止用のリテイナー(ワイヤー)がない点、「ABR-1」よりオクターブチューニングの調整範囲が広くなっている点など、改良が加えられている。