J.W.Black Guitarsとは
J.W.Black Guitarsは、元フェンダーカスタムショップ・マスタービルダーのJ.W.Black氏によるギターブランド。2002年にフェンダーを離れたのち、日本のクロサワ楽器の依頼を受けて2011年に立ち上げた。
J.W.Black Guitarsは、本人が製作するUSA製と、日本のメーカーが作る日本製の2種類がある。USA製は、木材の選定から製作まで、J.W.Black氏がほぼ一人で行っているそうだ。
日本製のJ.W.Black Guitarsは、本人が用意した仕様に基づいて製作されている。日本製ラインナップである「Japan Made Series」は、Sugi Guitarsをはじめ、J.W.Black氏と旧知の仲の工房で生産される。
ギターモデルは、テレキャスター、ストラトキャスター、ジャズベースの3種類。J.W.Black氏が製作するJWB-S、JWB-T、JWB-JBと、日本製のJWB-JP-S、JWB-JP-T、JWB-JP-S-JB BASSが存在する。モデル名に「JP」が入っているのが日本製。ジャズベースの5弦ベースは日本製のみの製造(USA製のラインナップにはない)。
J.W.Black氏は、自身がストックする木材がなくなった時点でギター製作を終了することを公表していた。2021年に木材のストックがなくなっため、公式サイトで生産終了が発表された。
こちらは日本製のJ.W.Black Guitars。モデル名はJWB-JP-T。J.W.Black氏が信頼を寄せるCallahan(カラハン)ピックアップを搭載。カラーはレイクプラシッドブルー。
J.W.Black氏の経歴
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1976年18〜19歳の頃、元マーティンのマスタービルダー、ディック・ボーク氏のホームショップでギター作り学び始める。ディック氏からはアコースティックギター製作とエレキギター製作を教わる。
当時、同じ地区に住んでいたロジャー・サドウスキー(Sadowsky Guitarsの創設者)から一緒に仕事をしいないかと誘いを受け、彼からもギター製作を教わる。
サドウスキーとの出会いにより、エレキギター製作の道を進むことを決意。 -
1980年アメリカ合衆国ミズーリ州のカンザスシティに引っ越す。ヴィンテージディーラーのジム・コルクラジャ氏と共に、ヴィンテージギター/リペアショップをオープン。ヴィンテージギターの販売やレストア、リペア、ギター製作を行う。
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1985〜1989年ニューヨークのマンハッタンでSadowsky Guitarsを立ち上げたロジャー・サドウスキーから、Princeのギターを手伝ってほしいと頼まれ、彼の元で働き始める。サドウスキーにとって、J.W.Blackは最初に雇った正社員であった(Sadowskyの公式サイトに書かれている)
Sadowsky Guitarsでは、マーカス・ミラーやジム・ホールなど世界的なミュージシャン、当時のトップクラスのスタジオ・ミュージシャンと仕事をし、経験を積んでいった。
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1989〜2002年フェンダー・カスタムショップの設立メンバーであるジョン・ペイジ氏から誘いを受け、フェンダー社のマスタービルダーとして雇用される。
レリック加工(エイジド加工)を発案したのはJ.W.Black氏だと言われており、フェンダー退社後もさまざまなギターのレリック塗装に携わっている(後述)。
フェンダー社では、カスタムショップの仕事で最初に携わったルー・リードのプロジェクトに始まり、エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、リッチー・サンボラなど、世界的なギタリストに携っていた。レリック塗装やセットアップで卓越した腕を持ち、人気のマスタービルダーとなる。
その他、アーティストリレーション(ミュージシャンの楽器の修理・調整などのサポート)やR&Dという開発部門などでも仕事をしている。メキシコ製モデルや当時のフェンダー・ジャパンのデザイン・開発にも携わる。
日本製のHeartfield(ハートフィールド)というブランドにも携わっていた(USAフェンダーがデザインしたモデルを日本のフジゲンが製作)。
2002年にフェンダーを退社。
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2002年〜フェンダー社を離れてからは、以前に行っていたヴィンテージギターのレストアやリペアの仕事に戻る。そこでは卓越したレリック加工(エイジド加工)も手掛けていた。
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2011年〜自身のブランド、J.W.Black Guitarsを立ち上げる。本人によって製作されるUSA製モデルと、Sugi Guitarsが製作する日本製モデルの2つのラインナップで販売開始。USA製は木材の選定から製作までJ.W.Black本人がほぼ一人で行うため生産本数が少ない。
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2021年自身のWebサイトに、2021年2月10日付けで2021年分のJ.W.Black Guitarsはすべて予約販売が完了している旨を掲載。2021年分のギターでJ.W.Black Guitarsは生産終了となった。
J.W.Black氏のインタビュー映像
J.W.Black氏が携わったギター
J.W.Black氏はレリック加工(エイジド加工)でさまざまなギターに携わっている。一部であるが、J.W.Black氏が携わったギター/ギターブランドを紹介。
Linhof Guitar(リンホフ・ギター)
ヴィンテージギターのディーラー/コレクターとしても知られるKurn Linhof(カーン・リンホフ)氏とJ.W.Black氏が共同で立ち上げたギター・ブランド。J.W.Black氏は設計と塗装(エイジド加工)を手掛けていた。リンホフ氏は2014年に亡くなっており、また、生産本数が少ないたため、現在は入手が難しいギターである。
リンホフ氏の訃報に際し、Joe Bonamassa(ジョー・ボナマッサ)氏が追悼の意を表している。
Rest in Peace Kurt Linhof...A true legend in the vintage guitar business. pic.twitter.com/4enlxyhpqU
— Joe Bonamassa (Official) (@JBONAMASSA) September 13, 2014
Suhr - Antique Series
SuhrのAntique Seriesは、J.W.Black Guitarsとコラボレートによって生まれたスペシャルモデル。ジョン・サー氏とJ.W.Black氏は、カスタムショップの元同僚で旧知の仲。
モデル名の通り、ボディ、ブリッジ、ピックガード、ネジ類などにエイジング加工(アンティーク加工)が施されている。エイジング加工にJ.W.Blackが携わっている。
Sugi - DS499M
Sugi Guitarsのギターモデル「DS499」にJ.W.Black氏がレリック加工を施した「DS499M」
J.W.Blackギターを愛用している国内のギタリスト
バークリー音楽院卒のジャズギタリスト、國田大輔(くにた だいすけ)氏がJ.W.Blackギターを愛用。3シングルのストラトと、SSHのストラトの2本を所有。SSHのストラトはシグネイチャーモデルではないが、J.W.Black氏本人が國田氏のために作った個体。
購入したJ.W.Blackギターに使用していた弦のメーカーを知りたくてJ.W.Black氏に問い合わせたところ、Curt Manganというアメリカのメーカーの弦を使っていると返信があったそうだ。これをきっかけに交流が始まり、國田氏が自身のアルバムを送ったところ、J.W.Black氏から國田氏のギターを作って提供したいという申し出があった。3シングルのストラトは持っていたので、SSHのストラトの制作を依頼。J.W.Black氏からサーフグリーンのSSHのストラトを提供してもらったそうだ。
ギター提供の経緯、載っているピックアップの種類など、J.W.Black氏制作のギターについて詳しくは以下の動画で。