ギタークラフトの学校の実習では、最初に「道具の仕立て」から教えてくれます。仕立てというのは、鉋やノミなどの刃物を研いだり、道具として適切に使える状態に手入れ・調整することです。
木工用の工具などは購入してすぐ使えそうに見えますが、最初に仕立てをしないと綺麗に仕上がらないため、刃を研いだりして調整していきます。後ほど実物の写真を掲載しますが、たしかに、仕立て前と仕立て後では道具の質が全然違います。
鉋刃の砥ぎ
以下の順で鉋の刃を研いでいきます。
- ①裏押し
刃裏(刃物の裏面の平らな部分)を研ぐ
└ 1'中研ぎ(中砥で研ぐ)
└ 2'仕上げ(仕上げ砥で研ぐ) - ②切れ刃の砥ぎ
切れ刃(刃物の表面の斜めになっている部分)を研ぐ
└ 1'中研ぎ(中砥で研ぐ)
└ 2'仕上げ(仕上げ砥で研ぐ)
砥石のすり合わせ
前提として、裏押しするにしても切れ刃を研ぐにしても、砥石(といし)の「すり合わせ(面直し)」をしてから研いでいきます。すり合わせというのは、砥石同士をこすり合わせて砥石の凹凸をなくして平らにする作業です。すり合わせは1度ではなく、刃物を研ぐたびに行い、常に平らな状態にします。
裏押しの中研ぎであれば、「中砥のすり合わせ」→「裏押し(中研ぎ)」→「中砥のすり合わせ」→「裏押し(中研ぎ)」…を何度も繰り返していきます。仕上げとも同じで、「仕上げ砥のすり合わせ」→「裏押し(仕上げ)」→「仕上げ砥のすり合わせ」→「裏押し(仕上げ)」…の繰り返し。
中砥の前に荒砥(あらと)による荒砥ぎがありますが、実習では中研ぎから行っていきます。仕上げ砥は中砥でできた傷を綺麗にする(より細かい傷にしていく)ための砥石です。
刃物を研いでいる時間と同じくらい、砥石をすり合わせする時間がかかるので手間がかかる作業ですが、刃物を綺麗に研ぐのに必須の工程です。
下記は中砥のすり合わせの様子です。上の中砥を動かして、下の中砥を整えていきます。面の凸凹がなくなるまで、ひたすらこすり合わせます。
下記は仕上げ砥のすり合わせの様子です。下側が仕上げ砥、上側が中砥です。すり合わせしたい砥石を下にして、別の砥石をこすってすり合わせていきます。
①裏押し
裏押しは一度行ってしまえば、何度も行う必要はありません。基本的に最初に研いでおけば研ぎ直しは不要です。下記画像は南京鉋の鉋身の裏押しのビフォーアフターです。
左が裏押し前、つまり買ったときのままの状態。このままでも刃物としては使えますが、刃裏(裏面の上側の部分)を研いで綺麗な平面にしていきます。写真ではわかりづらいですが、刃裏の下側の部分は「裏透(うらすき)」といって凹みがある部分があります。
裏スキは研ぐ面積を減らす役割があるので凹んだままにしておくのが正解です。右側は裏押し後の写真で、刃裏(裏面の上側の部分)を研いだことで綺麗な平面になりました。
②切れ刃の砥ぎ
切れ刃は先端の斜めになっている部分のみ研いでいきます。こちらは反り鉋の切れ刃の砥ぎ前と砥後の比較。特に先端部分の仕上がりの違いはわかりやすいですね。
実習で使う鉋は、平鉋、豆平鉋、南京鉋、反り鉋、四方反鉋の5つ。すべての鉋身(と裏金)を研いで仕立てていきます。他にも、叩きノミ(大・小)、仕上げノミ、丸突きノミ、小刀、チゼルも使うので、それぞれ砥ぎが必要です。刃物の切れはギターの仕上がりや作業スピードに影響するので、時間がかかってもしっかりと研いでいきます。