A.R.E.とは
「A.R.E.」は、ヤマハが独自に研究・開発した木材加工技術。「Acoustic Resonance Enhancement」の頭文字をとったもの。専用の装置を使って温度・湿度・気圧をコントロールし木材を熟成させることによって、長年使い込んだ楽器、いわゆるヴィンテージのような鳴りを再現する技術。1990年代にヤマハがバイオリンの製造を開始する際に研究が始まり、その後バイオリンを始めアコースティックギターやエレキベースでこの技術が用いられている。
A.R.E.の特徴・メリット
A.R.E.の仕組み
木材は主にセルロース、ヘミセルロース、リグニンという3つの成分でできており、その中で主成分となっているのがセルロース。新品の楽器ではこのセルロースが結晶化されていないバラバラの状態となっており、音の伝達を妨げてしまう。
通常は経年変化によって徐々にセルロースの結晶化が進み、セルロースの束が整然と並ぶことによって音の伝達が良くなっていくが、A.R.E.処理では金属製の圧力容器に木材を入れ、温度・湿度と圧力を高精度でコントロールして処理を行うことで、新品の楽器でも経年変化したのと同様にセルロースを結晶化させ音の伝達を良くすることができる。
また、セルロースの内側にあるヘミセルロースも振動の妨げとなってしまうが、こちらもA.R.E.処理によって適度に分解され減少する。セルロースとヘミセルロースの状態が、長年使い込んだ楽器と同じような分子構造へと変化するのが「A.R.E.」。化学薬品等は一切使用せず、ヤマハ独自のノウハウによる緻密なコントロールによって木材の状態がコントロールされている。
A.R.E.による音の変化
- 低域帯のサステインが増す
- 中高域の立ち上がりが良い
- アタックの後の高域の減衰が速く、キンキンした耳障りな成分が残らない
A.R.E.処理を行うことによる音の変化としては、いわゆる「良く鳴る楽器」の特徴を持つとされている。低音域のサステインが増大し、中高域は立ち上がりと抜けの良い音へと変化してくれる。新しい木材の場合、高音域が強すぎるために耳障りな音と感じてしまう問題があるが、A.R.E.処理によって高域の減衰が速くなり、キンキンとした耳障りな音を抑え、心地良いサウンドを響かせることができる。
A.R.E.処理されたギター・ベース
A.R.E.処理はヤマハ独自の技術であるため、これが施された楽器も当然ヤマハ製ということになる。
アコースティックギターの場合、2022年現在のLシリーズのラインナップ全ての表板が、A.R.E.処理の施されたものとなっている。
LL6 AREは、5万円を切るエントリークラスのモデルだが、価格の割に高音質でコスパの良いモデルとして人気。そのサウンドの秘密もA.R.E.にあるのかもしれない。
Mr.Bigのベーシスト、ビリー・シーンのシグネイチャーモデル『ATTITUDE3』もA.R.E.が採用されている。