ギター製作・メンテナンス

アコギのナット交換 、フレットすり合わせ 、弦高調整の記録(K.Yairiギター)

K.Yairiのアコースティックギター「LO-90-N」のナットの溝の幅を罫書き

知り合いのアコギを預かって調整をしましたので、その記録です。

フレットがすり減っていて、ナットも1弦がビビる寸前の高さまで減っていたので、フレットすり合わせとナット交換をして、弦高も調整しました。

預かったのはK.YairiのLO-90-Nというモデル。ボディ内部に貼ってあるラベルに「ANNE1999」と書いてあるので1999年製造のようです。
K.Yairiのアコースティックギター「LO-90-N」のボディの中にあるラベル

フレットすり合わせ

フレットのクラウン(弦が接する部分)がすり減って山型から平面になりつつあり、スケールを当てると凸凹になっているのですり合わせが必要です。
ナットもだいぶくたびれています。
K.Yairiのアコースティックギター「LO-90-N」のナットとフレット

K.Yairiのアコースティックギター「LO-90-N」のフレット K.Yairiのアコースティックギター「LO-90-N」のフレット

まずはフレットすり合わせからやっていきます。
マスキングをして指板を保護します。
K.Yairiのアコースティックギター「LO-90-N」のフレットすり合わせのためのマスキングをしたところ

フレットすり合わせはStewmacの「Fretbar」を使います。
弦を張ったまますり合わせできるアイテムですが、今回は弦を外してすり合わせします。
すり合わせ中の写真を撮り忘れましたが、スケールを当てて悪い箇所を割り出し、#320のサンドペーパーを貼ってフレットの整えました。
Stewmacのフレット用すり合わせ板「fretbar」

次はフレットヤスリでフレット上面の角を落としていきます。
油性ペンでフレット上面に線を引き、削れた部分をわかりやすくしておきます。
K.Yairiのアコースティックギター「LO-90-N」のフレットのクラウンにマジックペンで線を引いたところ

HOSCOのフレットクラウンファイルでフレットの角を落とします。
これは一方向で削っているタイプで、本体の矢印が指す方向に動かしてフレットの角を削っていきます。
K.Yairiのアコースティックギター「LO-90-N」のフレットをHOSCOのフレットクラウンファイルで削っているところ

フレットの角を落とせたら、ゴムパッドにサンドペーパーを巻いてキズをとっていきます。
私は柔軟性の高い耐震ゴムを使ってフレットのキズ取りをします。
サンドペーパーの番手を#320→#600→#800→#1000→#1200と上げてキズを細かくしていきます。
K.Yairiのアコースティックギター「LO-90-N」のフレットを#600のサンドペーパーで磨いているところ

K.Yairiのアコースティックギター「LO-90-N」のフレットを#1200のサンドペーパーで磨いているところ

仕上げにコンパウンドで磨いてフレットすり合わせは終わりです。
K.Yairiのアコースティックギター「LO-90-N」のフレットをコンパウンドで磨いているところ

K.Yairiのアコースティックギター「LO-90-N」のフレットすり合わせをし終えた状態 K.Yairiのアコースティックギター「LO-90-N」のフレットすり合わせをし終えた状態

ナット交換

次はナット交換です。
だいぶくたびれています。
形もあまり綺麗じゃないですね、、、
K.Yairiのアコースティックギター「LO-90-N」の交換前のナットの状態

ナットに塗装はあまり乗っていなかったですが、念の為にデザインナイフでナットとヘッドの間に切れ込みを入れて外します。
ナットに当て木を当ててプラチックハンマーで軽く叩いて取り外していくのですが、接着が弱まっていたのかすぐにポロッと外れました。
塗装の剥がれもなく、綺麗に外れて良かったです。
K.Yairiのアコースティックギター「LO-90-N」のナットを取り外した状態

ナット溝に接着剤が残っているのでマイクロチゼルで削り取ります。
ナット溝は平面を維持しないといけないので、意外と気を使う作業です。
K.Yairiのアコースティックギター「LO-90-N」のナット溝に残っている接着剤をマイクロチゼルで削っているところ

ナット溝の掃除が終わりました。
K.Yairiのアコースティックギター「LO-90-N」のナット溝に残っている接着剤をマイクロチゼルで削り終えたところ

ではナットを整形していきます。
今回は牛骨オイル漬けナットを使います。
アコースティックギターのナット

ナット溝の幅は5mm。
K.Yairiのアコースティックギター「LO-90-N」のナット幅をノギスで測っているところ

#150のサンドペーパーでナットの厚みを5mm弱まで落とします。
K.Yairiのアコースティックギター「LO-90-N」のナットの厚みを調整しているところ

この個体はナット溝の底面がヘッドの角度と同じで傾斜しているため、ナットの底面を斜めに削らなければなりません。
アコースティックギターのナット

ナットの底面を溝にぴったり合わせられました。
K.Yairiのアコースティックギター「LO-90-N」のナットの傾斜角を調整しているところ

ナットのサイドが斜めになっているタイプだったので、ナット溝の角度に合わせて斜めに削りました。
K.Yairiのアコースティックギター「LO-90-N」のナットの横の角度を調整しているところ

次はナットの上面の形を作ります。
6弦側は指板から3mmの高さ、1弦側は指板から2mmの高さを取り、1フレットにシャーペンを当ててRの形に合わせて罫書きをします。
K.Yairiのアコースティックギター「LO-90-N」のナット上面の形を罫書きしているところ

罫書きしたラインまで鉄ヤスリで削って高さを落とします。
K.Yairiのアコースティックギター「LO-90-N」のナット上面を鉄ヤスリで削ったところ

では木工用瞬間接着剤でナット接着をします。
接着剤がヘッドやネックに付かないようにマスキングをします。
K.Yairiのアコースティックギター「LO-90-N」のナット周りにマスキングを貼ったところ

瞬間接着剤はナット溝の底面に3箇所、指板壁面に3箇所、塗布します。
K.Yairiのアコースティックギター「LO-90-N」のナット溝に木工用瞬間接着剤を塗布

指板壁面側にもグッと力を入れて密着させます。
K.Yairiのアコースティックギター「LO-90-N」のナット接着をしたところ

接着ができたので、ナット上面の溝の幅を罫書きします。
ナットの幅はジャスト43mm。
まず、6弦側は端から4mm、1弦側は端から3mmの位置に溝の位置を罫書きします。
残りの弦の幅は、
ナット幅43mm-6弦4mm-1弦3mm=36mm
36mm÷5=7.2mm
となります。
K.Yairiのアコースティックギター「LO-90-N」のナットの溝の幅を罫書き

今回張る弦は、エリクサーの「Extra Light 10-47」。
1弦:010
2弦:014
3弦:023
4弦:030
5弦:039
6弦:047
上記よりも少し狭い幅のナットファイルで溝を切ります。
K.Yairiのアコースティックギター「LO-90-N」のナットの溝を切っているところ

溝切りができました。
まあまあいい感じに仕上がったと思います。
K.Yairiのアコースティックギター「LO-90-N」のナットの溝を切り終えて弦を張った状態

ナットの上面に傾斜をつけ、側面を丸みをつけ、サンドペーパーで#1200の番手まで上げて磨き、仕上げにコンパウンドで磨いて完成です。
K.Yairiのアコースティックギター「LO-90-N」のナットの溝を切り終えて弦を張った状態

K.Yairiのアコースティックギター「LO-90-N」のナットの溝を切り終えて弦を張った状態

弦高調整

最後に弦高調整をします。

12フレット上で6弦の弦高は約3.2mm。
K.Yairiのアコースティックギター「LO-90-N」の6弦の弦高をスケールで測っているところ

12フレット上で6弦の弦高は約2.7mm。
ちょっと高いので、6弦で2.5mm、1弦2.0mmまで落とします。
K.Yairiのアコースティックギター「LO-90-N」の1弦の弦高をスケールで測っているところ

サドルの底面をサンドペーパーで削り、全体的に弦高を落としました。
12フレット上で6弦の弦高は約2.5mmに。
K.Yairiのアコースティックギター「LO-90-N」の6弦の弦高をスケールで測っているところ

12フレット上で6弦の弦高は約2.0mmに。
K.Yairiのアコースティックギター「LO-90-N」の1弦の弦高をスケールで測っているところ

これで全体の調整が終わりました。
フレットすり合わせ、ナット交換、弦高調整でだいたい3時間くらいでした。
調整が済んだK.Yairiのアコースティックギター「LO-90-N」

ABOUT ME
監修・執筆:稲垣 健太(ケンタトニック)
ギター辞典コード辞典ボイトレ・音楽用語辞典の運営者。

音楽関係の仕事の経験、ギター製作の経験、音楽教室に通った実体験をもとに、音楽に役立つ情報を発信。

■音楽歴
中学2年生の時にギターを始める
高校1年生の時にドラムを始める
関西外国語大学外国語で軽音楽部に所属し、ボーカル、ギター、ベース、ドラムを演奏
39歳からボイトレに通い始める
42歳でギタークラフトを始める
└2023年4月にギタークラフトの専門学校・ESPギタークラフトアカデミー大阪校(GCA)に入学
└ギター製作やリペアの専門技術・専門知識を習得中(2023年〜現在)
└ギター製作の経験をほぼ毎日日記で更新
ギタークラフト製作日記

■音楽関連の仕事歴
[2006〜2009年]
大手CD・レコード販売店でロック、ジャズの仕入・販売を担当。
[2011年〜]
フリーランスのWebライター・Webディレクターとして開業。
大手音楽教室からの委託でボイトレサイトの運営、ボイトレ記事の執筆・編集に携わる。

■音楽教室の通い歴
[1995〜2000年まで]
某大手ギター教室に通う
[1997〜2002年まで]
某大手ドラム教室に通う
[2020年〜現在]
某大手音楽教室のボイトレ・話し方コースに通い中
ESPギタークラフトアカデミーにて月3回プロギタリストによる演奏授業を受講

■愛器
Stilblu #036 / #039 /#099
g'7 special(g7-TLT Type 2S)
Nashguitars S-57
Tom Anderson(Drop Top Classic -Deep Tobacco Fade)
TMG Gatton Thinline
Fender Custom Shop 1956 Stratocaster NOS
Gibson USA Exclusive Model / Les Paul Standard 60s Honey Lemon Burst

所有ギター一覧

■製作したギター
ギタークラフトアカデミー第1作目:
ポリゴンライン
ギタークラフトアカデミー第2作目:
Stand-Alone
ギタークラフトアカデミー第3作目:
Thin-Marauder
ギタークラフトアカデミー第4作目:
Focus Point
ギタークラフトアカデミー第5作目:
Uroboros LP

■好きなバンド
U2、Sigur Ros、THE 1975、Mr.Children、the band apart、くるり、SIAM SHADE、VAN HALEN

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株式会社ケタケタ