Mary Kaye Stratocasterとは
Mary Kaye Stratocaster(メアリー・ケイ・ストラトキャスター)は、1950年代半ばに女性ギタリストのMary Kaye(メアリー・ケイ)が使用した、ホワイトブロンドカラー&メイプルネック&ゴールドパーツという配色のストラトキャスターの呼称。
シグネイチャーモデルではないが、彼女にちなんでメアリー・ケイ・ストラトキャスターと呼ばれる。当時、メアリー・ケイはフェンダー・アンプを愛用していたが、ストラトキャスター本機を所有しておらず、カタログに載っている写真は持たされて撮ったものだったそうだ。
以下のように複数の呼称があるが、いずれもホワイトブロンドカラー&ゴールドパーツのストラトキャスターを指す。
- Mary Kaye Stratocaster(メアリー・ケイ・ストラトキャスター)
- Mary Kaye Strat(メアリー・ケイ・ストラト)
- Mary Kaye White(メアリー・ケイ・ホワイト)
- Mary Kaye Blonde(メアリー・ケイ・ブロンド)
- Mary Kaye Model(メアリー・ケイ・モデル)
※Nash Guitars、Don Grosh、XoticなどのブランドにもMary Kayeカラーがある
彼女の名は日本語では「マリー・ケイ」と表記されることもある。Fender Custom Shopの元マスタービルダーの岩撫安彦氏の著書『THE GALAXY OF THE STRATS』にはマリー・ケイ・モデルと表記されている。
Fenderギターの歴史上、メアリー・ケイ・ストラトキャスターは非常に有名なモデルであるが、彼女はオリジナルの個体を所有したことはなかったそうだ。当時のカタログに載っている個体は持たされて写真を撮ったもので、彼女が本モデルを初めて所有したのは、2003年にFenderからプレゼントされたCustom Shop製のMary Kaye Stratocasterであった(後述)。
「Mary Kaye Stratocaster」という呼称は、Fenderが付けたモデル名ではなく、非公式の通称である。2000年代になってからシグネイチャーモデルが作られ、Fender公式の呼称となった(後述)。
Mary Kaye Stratocasterの特徴
メアリー・ケイ・ストラトキャスターは、以下が基本的な仕様。
- ホワイトブロンド・フィニッシュ
- ゴールドパーツ(ゴールドハードウェア)
- メイプルネック
- アッシュボディ
フィニッシュ(塗装)はボディの木目(アッシュ材)が見える半透明のホワイトブロンドが特徴(木目があまり見えない個体もある)。ネック・指板はメイプルで、指板がローズウッドの個体はメアリー・ケイ・ストラトキャスターと呼ばない。
リイシュー版は当時のホワイトブロンドを再現しているため白が強いが、ヴィンテージの個体は経年変化で色が変わり、白があまり残っていない個体が多い。そのため、リイシューとヴィンテージでカラーが違って見える。
参考:Instrument Finish Color Chart | Fender
ヴィンテージ
リイシュー
基本的にストラトキャスターだが、以下のようにテレキャスターのメアリー・ケイ・ホワイト・ブロンドもある。
メアリー・ケイ・ストラトキャスターと呼ばれるようになった経緯
メアリー・ケイ・ストラトキャスターのオリジナルは、1955年頃に組み上げられた。Fender初のカスタムストラトキャスターで、後のカスタムショップモデルの先駆けとも言えるギター。オリジナルのシリアルはNo.09391。
1955年頃、Fenderからメアリー・ケイの元にブロンドフィニッシュ&ゴールドパーツのストラトキャスターが届けられ、下記の有名な写真が撮影された。この写真はFenderのプロモーション広告で、ラスベガスのショーの合間に撮影されたという。この後、このストラトキャスターはFenderに戻されたそうだ。
隣の男性はメアリー・ケイ・トリオのバンドメイトであるFrank Ross(フランク・ロス)とNorman Kaye(ノーマン・ケイ)。ノーマン・ケイは彼女の兄弟。
この時に撮影された宣材写真は音楽雑誌に掲載されて広まり、非公式で「Mary Kaye Stratocaster」と呼ばれるようになった。もともと彼女はD'Angelicoのギターを愛用していたが、この宣材写真をきっかけに、メアリー・ケイ=ストラトキャスターというイメージが定着していった。
メアリー・ケイ・トリオのアルバム。彼女が愛用していたD'Angelicoのギターが写っている
このホワイトブロンドのストラトキャスターは、プロモーション写真撮影の後にFenderに戻されたが、メアリー・ケイ・トリオがミュージカル映画『Cha-Cha-Cha Boom!』(1956年公開)に出演する際に再び貸し出された。この時を最後に彼女はこのストラトキャスターを演奏しておらず、所有もしていなかったそうだ。
以下の動画でメアリー・ケイがストラトキャスターを弾く姿が見られる。白黒なのでギターのカラーはわからないが、ホワイトブロンドのストラトキャスターである。
キース・リチャーズやジョー・ボナマッサもメアリー・ケイ・ストラトキャスターを愛用。ジョー・ボナマッサが所有する1958年製のMary Kaye Stratocaster
参考:Mary Kaye Strat - Stratocaster Story | Fender Guitars
Mary Kaye | Vintage Guitar® magazine
Custome Shop製Mary Kaye Stratocaster
2003年、Fenderからメアリー・ケイに、彼女の名を冠したCustom Shop製のMary Kaye Stratocasterがプレゼントされた。彼女に敬意を評して、バックプレートに「To Mary Kaye From Your Friends at Fender」と刻印されたそうだ。シリアルも彼女のイニシャルから取って「MK 001」というナンバリングが与えられた。
2005年にはCustom ShopからMary Kaye Tribute Stratocasterが発売され、公式にFenderのラインに加わった。
2007年にはFender 50th Anniversary American Vintage '57 Stratocaster Mary Kayeを発売。
メアリー・ケイ本人とCustom Shop製のMary Kaye Tribute Stratocaster