スプルースとは
スプルースは、アコースティックギターやクラシックギターのトップ材として用いられる木材。トップ材の中でも非常にポピュラーな材として知られている。マツ科トウヒ属の常緑針葉樹で、多くは北米やヨーロッパなど北半球に分布。
軽量で丈夫なことから建築材や家具材として用いられ、グレードの高いものが楽器用として使用されている。
スプルースの種類
スプルースには様々な種類があり、主にその産地によって「〇〇・スプルース」と名前が付けられている。
スペック表などで単に「スプルース」とだけ書かれている場合、最も標準的なシトカ・スプルースか、あるいは複数のスプルースを組み合わせた合板であるケース、個体によって用いられているスプルースが異なるケースなどがある。
シトカ・スプルース
スプルースと言えば、その多くは「シトカ・スプルース(Sitka Spruce)」というくらい最もポピュラーな木材。「シトカ」はアラスカのシトカという地名から来ており、アラスカやカナダ、アメリカ北部の西海岸が主な産地となっている。
バランスが良くクセのないサウンドで、ジャンルやスタイルを問わない。多くのギターに使われていることからも、アコギの標準的な木材と捉えられている。サウンドを比較するなら、シトカ・スプルースを基準と考えてみると良いかも。
Gibson J-45やMartin D-28といった人気のモデルは、いずれもシトカ・スプルースが使われている。
イングルマン・スプルース
シトカ・スプルースに次いでよく使われるのが「イングルマン・スプルース(Engleman Spruce)」。「エンゲルマン・スプルース」や「ホワイト・スプルース」とも呼ばれる。カナダの南部からロッキー山脈にかけての北西アメリカに分布。
シトカ・スプルースと比べるとやや軟質で比重が小さい木材。優しく透明感があり、繊細なサウンドはフィンガー・ピッキングスタイルに適していると言われている。
YAMAHA LL36 ARE
アディロンダック・スプルース
アメリカ東部が主な産地で、「レッド・ルプルース」とも呼ばれるのが「アディロンダック・スプルース(Adirondack Spruce)」。戦前によく使用されてもので、現在ではヴィンテージとなっているMartinやGibsonのアコースティックギターに使われていた木材。現在では非常に希少となっているため、高級なモデルにしか使用されていない。
シトカ・スプルースと比べると、パワフルでクリアなサウンドが特徴的。
Martin D-28 Authentic 1937
ルッツ・スプルース
シトカ・スプルースとイングルマン・スプルースの自然交配種で、カナダの一部でのみ採れる「ルッツ・スプルース(Lutz Spruce)」。シトカ・スプルースの強度と弾力性、イングルマン・スプルースのきめ細かく美しい色調を併せ持つ木材。
パワフルでボリュームのあるサウンドは、数々の有名ルシアーに「最高の音色」と称賛されるほど。
Taylor 712ce
ジャーマン・スプルース
ジャーマン、つまりドイツを中心にヨーロッパに多く分布する「ジャーマン・スプルース(German Spruce)」。「ヨーロピアン・スプルース」とも呼ばれる。古くからバイオリンやピアノの材としても使われてきた木材だが、近年は酸性雨の影響等で良質な材が採れず、非常に希少となっている。
スプルースの中では最も硬質な木材とされており、クリアで抜けが良く、輪郭のハッキリとしたサウンドが特徴的。ナイロン弦のクラシックギターに合うサウンドとも言われる。
イタリアン・アルパイン・スプルース
イタリアを中心にヨーロッパで広く分布する「イタリアン・アルパイン・スプルース(Italian Alpine Spruce)」。Martinのカスタムモデルでよく用いられている木材。
レスポンスの良さが特徴。