Fender Maverick(Fender Custom)とは
Fender Maverick(フェンダー・マーヴェリック)は、フェンダーが1969年中期〜1971年頃に販売していたギターモデル。当時の販売価格は289ドル。
発売当初は「Maverick」という名称でヘッドストックにもそのモデル名が記されていたが、発売して間もなく「Fender Custom」という名称に改められた。形は同じでも、ヘッドに「Maverick」と「Custom」と記されている2タイプがある。
短期間での発売で流通数が少なく、フェンダーの過去のモデルの中でもめったにお目にかかれないレアなモデル。ヘッドやボディの形状も他のモデルとは一線を画す個性的なデザインとなっている。
1969年製のMaverick
#Fender #Friday The Fender Maverick was converted from a 12-string, it had a brief run in 1969 but few were ever sold pic.twitter.com/LMJTV8o9zW
— PluckingFacts (@PluckingFacts) July 24, 2015
世界最大の楽器ショー「NAMM Show 2020(ナムショー)」にて、フェンダーの数量限定生産モデル「Parallel Universe」の第2弾のラインナップとして、「Maverick Dorado(マーヴェリック・ドラド)」が発表された。モデル名とスペックに少し変更が加わっているが、Maverick(Custom)の復刻版である。
※Parallel Universeは、「もし並行宇宙が存在したら…」というコンセプトで作られる遊び心のあるコレクション。
Maverick(Custom)が開発された経緯
Maverick(Custom)は、端材として残っていた12弦ギターのFender Electric XII(エレクトリックXII)のネック、ボディ材、ピックアップの寄せ集めで作られた。Electric XIIは人気が出ず、余ったボディ材はMaverick(Custom)に流用されることに。しかし、Maverick(Custom)も売れ行きが悪く、早々にラインナップから姿を消した。
Electric XIIの詳細はこちらの記事で。
同時期(1969年)に発売されたFender Swinger(フェンダー・スウィンガー)も同じような理由で開発されたモデル。こちらは5弦ベース・Fender Bass V(フェンダー・ベースV)の売れ行きが不調で加工品が余ってしまったため、リシェイプしてSwingerというモデルになった。
Swingerはこちらの記事で詳しく紹介。
Maverick(Custom)の特徴
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ヘッドストックMaverick(Custom)の独特なヘッドストックは、ホッケー・スティック・ヘッドと呼ばれる(ホッケーで使うスティックのヘッドに似ているため)。これはElectric XIIのヘッドの仕様と同じで、材料を流用したためこのような形になった。
ヘッドストックは12個のペグを設置するために縦長の形状になっている。12弦ギター用に12個のペグ穴を開けていたため、6個の穴を埋めてベニヤで加工したそうだ。
ヘッドストックに記されるモデル名は、「Maverick」と「Custom」の2種類がある。宮路楽器神田店さんのブログで「Maverick」と「Custom」の両方のヘッドストックを見ることができる。
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ボディシェイプElectric XIIの余ったボディ材をリシェイプ。その結果、フェンダー史上、類をみない独特なボディシェイプとなった。同時期に同じ用にリシェイプで販売されたSwingerも独特な形状している。
「Maverick」は、「異端者」「独自路線を行く」という意味。まさにその名前の通り、フェンダーの歴史の中でも異端な存在。
ボディシェイプはオフセット(左右非対称)。これは元になっているElectric XIIと同じ。オフセットについては以下の記事で詳しく解説。
オフセット・ギターとは ‐ ボディのウエストの位置が左右非対称になっているギターオフセット・ギターとは? 「オフセット・ギター」は、ジャズマスターやジャガーなど、"ボディのウエストの位置が左右非対称"になっているシ... -
ブリッジMustang(ムスタング)のブリッジを流用。
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ピックアッププレジションベースと同じような2つに分かれたスプリット・ピックアップを搭載。Electric XIIのピックアップがスプリット(分割)タイプで、それを流用している。
Marverick Doradoの特徴
Parallel UniverseのMarverick Doradoは、いくつか仕様変更している。特徴的なボディシェイプとホッケースティックのヘッドストックは、オリジナルを踏襲。
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ピックアップスプリットピックアップから、フィルタートロン型のハムバッカー2基に変更。フェンダーのチーフギターエンジニアで数多くのピックアップの開発を手掛けてきたティム・ショウがデザインしている。
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ヴィブラートシステムオリジナルはMustangのトレモロユニットを搭載していたが、ビグスビー・ヴィブラートシステムに変更。
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指板オリジナルはローズウッド指板であったが、ダークエボニー指板に変更。フレット数も21から22に変更されている。
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カラーウルトラバースト、ミスティック・パイン・グリーン、ファイアーミスト・ゴールドの3種類。サーフ・グリーン・パラレル・ユニバース II・デラックス・ハードケースが付属。
Marverick Doradoの試奏動画