弦落ちとは
弦落ちは、通常あるべき位置から弦がズレてしまい演奏に支障をきたす状態のこと。ブリッジサドルから弦がズレる場合の弦落ちと、フレットから指板の外へと弦がズレてしまう場合の弦落ちとがある。
この記事ではサドルからの弦落ちについて解説していく。
サドルからの弦落ち
サドルからの弦落ちとは、強いピッキングやストローク、チョーキングなどの際に、弦がブリッジサドルから外れてしまう状態のこと。本来の位置からズレてしまうと、まともに演奏ができなくなってしまう場合も。
ブリッジサドルから弦がズレてしまう弦落ちは、ジャズマスターやジャガータイプのサドルで起きることが多い。いずれもフローティング・トレモロ・システムが搭載されているギターであり、弦落ちの原因もこの辺りにある。
弦落ちの原因
- テンションが弱い
- サドルの溝が浅い
テンションが弱い
Fenderのジャズマスターが発売されたのは1958年、ジャガーは1962年で、当時は現在よりも弦のゲージが太めなのが主流であった。テンションの強い太い弦を張ることを前提として、ボールエンドからサドルへの角度が浅く設計されている。当時と比較して細い現在の弦を張るとテンションが弱い、つまり弦をサドルに抑えつける力が弱いためにズレやすく、サドルから弦が落ちてしまう原因となっている。特にジャガーはショートスケールのため、よりテンションが弱い。
サドルの溝が浅い
また、サドルの溝が浅いのも弦落ちの大きな原因。ジャズマスターのサドルは、ネジを切断したような溝のたくさんある形状をしており、この溝が浅いため簡単にズレて他の溝へと弦が移動してしまう。
弦落ちの対策
サドルからの弦落ち対策にはいくつかの方法がある。手軽にできる方法から、お金と手間のかかる方法まで様々。
- 太い弦を張る
- 溝を掘る
- イモネジを入れ替える
- ムスタング用のブリッジサドルに変更する
- ブリッジごと交換
- Buzz Stop Barを取り付ける
太い弦を張る
昔と比べて弦が細くなったのが弦落ちの原因の一つなら、当時のような太い弦を張れば問題は解決する。当時の弦のゲージは13〜54ぐらいだったので、そのぐらい太い弦に張り替えれば、強いテンションで弦落ちを防ぐこともできる。
ただし、弦のゲージを変えることは、弾き心地やサウンドにも変化を及ぼしてしまう。また、太すぎる弦はナットの溝と合わない可能性がある。太い弦に対応するためにナットの調整をする必要があるのなら、他の方法を試した方が良いかもしれない。
溝を深く掘る
溝が浅いなら溝を深くすればいい、とばかりにヤスリなどを使って溝を掘るという方法もある。お金が掛からない方法ではあるが、当然一度ヤスリをかけてしまうと元に戻すことはできないため、削る技術に自信がないならオススメできない。
イモネジを入れ替える
弦落ちしやすい1、6弦のイモネジを3、4弦のものと入れ替えるという方法。1、6弦と比べて3、4弦のイモネジは少し長くなっていることで弦落ちしにくいというもので、ナンバーガールの田渕ひさ子氏がこの方法で対策していることで知られている。
@gt_daai 強くかき鳴らしてるつもりなんですけど、なぜかここ何年も弦落ちしなくなりました。無意識に加減してるのかも?です。でも、イモネジを3,4弦のと1,6弦のをかえっこして、イモネジで止まるようにしてたりします!
— 田渕ひさ子 (@__hisako) November 17, 2012
ムスタング用のブリッジサドルに変更する
最も定番かつ確実な方法とされているのが、ブリッジサドルをムスタング用の物に交換するというもの。Fenderムスタングのサドルはジャズマスターやジャガーのサドルと比べて溝が深く弦落ちの心配が少ない。しかも、そっくりそのまま置き換えることができるので誰でも手軽に対策できる。
KTSの「PR-Mu For Mustang, Jaguar, Jazzmaster」は、ムスタング、ジャガー、ジャズマスターに搭載可能なサドル。
最初からムスタング用サドルを採用したモデルもある。Fenderの現行モデルである「American Professional II Jazzmaster」もその一つ。
また、かつてカート・コバーンがやっていたチューン・O・マチックに変更するという方法もある。ただしその場合は本体に木工加工が必要となるため、リスクが大きい。
ブリッジごと交換する
サドルだけでなく、ブリッジごと交換してしまうのも有効な対策。ジャズマスターやジャガーのブリッジは弦落ちだけでなく、共振によるビビリのような問題も抱えている。ブリッジごと交換してしまうことで、そういったトラブルをまとめて解決しようというもの。
交換用のブリッジとして知られているのが「Mastery Bridge(マスタリー・ブリッジ)」は、大掛かりな改造をすることなく取り替えが可能。FenderUSAやメキシコに適した、足部分の直径0.310インチの「M1」と、JAPANなどに適した0.315インチの「M2」がある点に注意が必要。
Buzz Stop Barを取り付ける
テンションを強くするために「Buzz Stop Bar」を取り付けるという方法。ブリッジとテールピースの間に取り付け、角度を急にしてテンションを強くすることで弦落ちを改善しようというパーツ。トレモロユニットのネジを利用して固定するので、穴を開けたりする必要なく、簡単に取り付けることができる。