スキャット(Scat)とは?
- 音楽における「スキャット(Scat)」は、ジャズなどで歌詞の代わりに意味のない音節を用いて、即興でリズムとメロディを作りながら歌う歌唱法。
- スキャットでは「la-la-la」や「da-di-da」といった意味のない音節で歌うのが特徴。
通常の歌唱は意味を持つ言葉を発声するが、スキャットでは声を楽器のようにして歌ったり、楽器を模倣して歌ったりする。
※音節(おんせつ)は、切れ目なく発音され、ひとまとまりの音として聞き取られる音声上の一単位。
例えば、「おんがく」であれば、「おん」「が」「く」で音節を区切るので、3音節となる。
スキャットの始まりは?
- 誰がスキャットを始めたのかは定かではないが、一説によると、1900年初頭に活躍したラグタイム(※1)の歌手Gene Greene(ジーン・グリーン)が最初であると言われている。
彼が1911年から1917年にかけて5回レコーディングを行った『King of the Bungaloos』において、スキャット歌唱を取り入れられている。
1分45秒あたりからスキャットらしき歌唱をしている。
- その後、ルイ・アームストロングが1926年にリリースした『Heebie Jeebies(ヒービー・ジービーズ)』によって、スキャットが広まったと言われている。
『Heebie Jeebies』でアームストロングがスキャットで歌ったきっかけとして、こんな逸話が残っている。
「1926年、ルイ・アームストロングは『Heebie Jeebies』のレコーディングをしていた。曲の真ん中あたりにさしかかった時、アームストロングは歌詞が書かれた紙を床に落としてしまう。彼は素晴らしい状態で進んでいたレコーディングを止めたくなかったので、即興で意味のない言葉で歌った。
アームストロング自身はそのテイクは破棄されるだろうと思っていたが、レコーディングスタッフによって採用され、正式なバージョンとしてリリースされた。」
※1:ラグタイム
19世紀末にアメリカ南部で生まれた黒人音楽。ピアノ伴奏による音楽で、鋭いシンコペーションを持ったメロディが特徴。ジャズの源流のひとつとなった音楽だが、ジャズが即興演奏が多用されたいたのに対し、ラグタイムは楽譜通りに演奏するスタイルが主で即興演奏はあまりみられない。
スキャットマン・ジョン
- Scatman John(スキャットマン・ジョン)、本名:John Paul Larkin(ジョン・ポール・ラーキン)氏は、1995年に発売したシングル『Scatman (Ski-Ba-Bop-Ba-Dop-Bop)』でスキャットとダンスミュージックを融合した楽曲を発表し、全世界で600万枚以上を売り上げた。
- スキャットマン・ジョンの略歴:
ジョンは子供のころから吃音症に悩まされ、コミュニケーションに対して精神的なトラウマを抱えていた。ジャズピアニストとして活動していたジョンは、キャリアを向上させるためにドイツのベルリンに移住し、演奏に歌を加えることを決心する。ステージで『On the Sunny Side of the Street』という曲でスキャットを披露し、喝采を浴びたことで吃音の悩みから開放される。
ジョンに仕事を提供していたアイスバーグ・レコード(デンマークのレーベル)のエージェントは、ジョンのスキャットソングを聴き、ダンスミュージックやヒップホップを組み合わせることを考えつく。ジョンは笑われたり批判されたりするのではないかと思い、提案を受けるべきかためらっていた。
ジョンは、妻のジョディの後押しもあって提案を受け入れ、52歳の時に最初のシングル『Scatman (Ski-Ba-Bop-Ba-Dop-Bop)』をレコーディングし、ステージネームをスキャットマン・ジョンとする。デビューシングルは600万枚を売り上げるヒットとなり、彼のスキャットは世界的に有名になった。
デビューシングル『Scatman (Ski-Ba-Bop-Ba-Dop-Bop)』
セカンドシングル『Scatman's World』